110b 地獄に落とされる女たち
       デルフィーヌとイポリット

衰弱しているランプの淡い光のなか、
香りのしみ込んだいくつかの深々したクッションの上で、
イポリットは、彼女の若い無邪気の幕をもち上げる
強い愛撫を夢想していた。

彼女は、嵐で乱された目で、すでに遠くなった
彼女の純真の空を探し求めていた、
まるで旅人が、今朝通り過ぎた青い地平の方に
頭を向けるかのように。

和らいだ両目からの怠惰な涙、
打ちひしがれた様子、呆然、陰気な悦楽、
負けた両腕、無意味な武器のように投げ出されているが、
すべてが助け、すべてが飾っていたのは、彼女のか弱い美しさ。

その足もとに横になり、穏やかで喜びに満ちて、
デルフィーヌは燃える視線で彼女をじっと見つめていた、
まず初めに牙で印をつけた後で
獲物を見守る強い獣のように。

強い美女は、か弱く見事な美女の前に跪き、
心地よさそうに勝利のワインを飲んでいた、
そして相手の方に身を伸ばした、
まるで甘い感謝の言葉を得るためのように。

彼女が、青白いいけにえの目のなかに探していたのは
快楽の歌う無音の賛歌、
そして長い溜息のように目蓋から出てくる
無限で崇高なあの感謝。

━━ 「イポリット、いとしい人、何を語るの、これらから?
今わかっているのかしら、あなたの最初に咲いたバラを
神聖ないけにえとして、捧げてはならないことが、
それを萎れさせかねない荒々しい呼吸に対して?

私のキスたちは軽い、夕暮れに澄んだ大きな湖を
愛撫するカゲロウのように、
それなのに、あなたの男のそれらは轍をうがつのよ、
まるで荷車か鋤の引き裂く刃のように。

それらはあなたを踏んで通っていくのよ、まるで
容赦ない蹄のある重い引き馬か引き牛のように . . .
イポリット、オー私の妹!さあこちらに向けて、あなたの顔を、
あなた、私の魂で私の心、私の全てで私の半身、

私の方に向けて、青と星に満ちた両目を!
神の香油の魅惑的な眼差したち、これらのひとつのために
私はもっと曖昧な快楽のヴェールをはいであげる、
そしてあなたを眠らせてあげる、果てしない夢のなかに!」

だがその時、イポリットはその若い顔をあげて、
━━ 「私は恩知らずでないし後悔もしてないわ、
私のデルフィーヌ、私は苦しい、私は不安よ、
夜の恐ろしい食事の後のように。

私に襲いかかる感じなのは、重苦しい恐怖、
散らばった亡霊の黒い群れ群れ、
それらは私を揺れる道の上につれ出そうとする、
そこは血まみれの地平線が四方を閉ざしているわ。

すると私たちは変なことをしたのかしら?
説明して、できるなら、私の動揺と私の恐怖を。
あなたが「私の天使!」と私に言うとき、私は恐れ
おののくの、それなのに唇はあなたに向かう感じがする。

私を見つめないで、そんな風に、私の思いのあなた!
いつまでも私が愛するあなた、私が選んだ姉、
たとえあなたが仕掛けられた罠だとしても
そして私の堕落の始まりだとしても!」

デルフィーヌは、悲劇的なたてがみを揺さぶり
鉄の神託台に座りじだんだを踏むようにし、
宿命の目で、専制君主的に答えた。
━━ 「いったい誰が恋を前にあえて地獄を語るのか?

無益な夢を追う男は、永遠に呪われるがいい、
彼は愚かにも初めて言い張った、
不毛にして解けない問題に取りつかれ、
恋愛の事々に貞淑を混ぜることを!

神秘の調和のなかに、影を熱と、夜を昼と
結びつけようとする者は、
人が愛と呼ぶこの赤い太陽で
麻痺するその体を暖めることは決してできない!

行け、望むなら、愚かなフィアンセを求めに。
走れ、彼の残酷なキスに処女の心を捧げに。
そして、後悔と恐怖に満ち、それも蒼白になり、
おまえは私に再び持ってくるのさ、傷跡のある胸を . . .

人はこの世でただ一人の主人しか満足させられない!」
しかしその少女は、巨大な苦しみをぶちまけながら、
突然叫んだ。―「私の心の内で広がっているのは、
大きく開いた深淵、この深淵は私の心よ!

火山のように燃えている、虚空のように深い!
何もこのうなる怪物を満腹させない、
そして復讐の女神の渇きをいやすものもない、
彼女はトーチを手にそいつを焼きつくす、血までも。

なんと私たちの閉じられたカーテンが、世間から
私たちを切り離し、疲労が休息を連れて来ることか!
私はあなたの深い胸に私の身をなくしたい、
そしてあなたの胸に見つけたいのは、墓の冷たさ!」

━━ 降りてゆけ、降りてゆけ、哀れな犠牲者たち、
降りてゆけ、永遠の地獄からの道を!
深淵の最深部に飛び込め、そこはあらゆる罪が、
空由来ではない風に鞭打たれ、

ごちゃまぜに沸き立っている、雷雨の騒ぎを伴って。
狂った亡霊たち、走れ、君らの欲望の目標へと。
決して君らの激しい怒りを君らは晴らせないし、
君らの懲罰は君らの快楽から生まれるのだ。

決して新鮮な光は君らの洞窟を照らさない。
壁々の割れ目から熱のある瘴気が
ランタンのように燃えながら漏れている、
そして恐ろしいそれらの香りで君らの体にしみこむ。

君らの享楽からくる厳しい不毛は
君らの渇きを悪化させ、君らの皮膚をこわばらせる、
そして欲望の荒れ狂う風は
君らの肉体をばたつかせる、古い旗のように。

生きている人々から離れ、さまよい、断罪され、
荒野を横切り、狼たちのように駆け回れ。
君らの宿命を果たせ、乱れた魂たち、
そして逃れよ、君らが自身に持つ無限を!