63 現世に戻った者 Le Revenant
63 現世に戻った者
野獣の目をした天使のように、
私は君の閨房に戻ってくる、
そして君に向かって音もなく
夜の影とともに滑り込む。
そして私が君に与えようとするのは、
我が褐色の女、月のように冷たいキスと
蛇の愛撫、
それは墓穴のまわりで這っているが。
鉛色の朝が来るとき、
君は私の場所が何もないのを知るだろう、
そこは宵まで冷たいままだ。
他の男らが君の生活と君の若さを
優しさによって支配するので、
私といえば、恐怖によって支配したい。
62 悲シミテサマヨフ MOESTA ET ERRABUNDA
62 悲シミテサマヨフ
言って、君の心は時々飛ぶのか、アガート、
汚い都市の黒い大海から遠く離れて、
もうひとつの大海に向かって、そこは光輝が爆発し、
処女のように、青く、澄み、深い?
言って、君の心は時々飛ぶのか、アガート?
海、広大な海、我々の労苦を慰めよ!
どんな悪魔が海、うなる風の巨大なオルガンが
伴奏するしゃがれ声の歌姫に、子守歌の
その気高い役目を与えたのか?
海、広大な海、我々の労苦を慰めよ!
私を運んで行け、客車! 私を奪い去れ、快速帆船!
遠くへ!遠くへ!ここは泥が我々の涙でできている!
― アガートの悲しい心が時々言うのは本当か?
「悔いから、罪から、苦しみから遠くへ、
私を運んで行け、客車! 私を奪い去れ、快速帆船」
なんとあなたは遠くにいることか、芳香の楽園、
そこでは澄んだ青空のもと全ては愛と喜びだけ、
そこでは人の愛することの全ては愛されるに値する、
そこでは純粋な快楽のなかで心は溺死する!
なんとあなたは遠くにいることか、芳香の楽園!
さて幼い恋の緑の楽園、
競走、歌、キッス、ブーケ、
丘の後ろで響いているヴァイオリン、
夕暮れ、林のなかで、ワインの酒壺とともに、
― さて幼い恋の緑の楽園、
無邪気な楽園、ひそかな楽しみでいっぱい、
それはインドやシナよりも既に遠いのか?
嘆きの叫びでそれを呼び戻し、
銀の歌声で再び活発にできるのか、
無邪気な楽園、ひそかな楽しみでいっぱい?
61 クレオルの夫人に A une dame créole
61 クレオルの夫人に
香りに満ち太陽が愛撫する国で、
私が知ったのは、真紅にすっかり染められた木々と、
眼に怠惰の雨を降らせる椰子からなる天蓋の下で、
知られざる魅力をもつクレオルの夫人。
彼女の顔色は青白くも暖かい。髪が褐色の魅惑の人は
その首に高貴で気取った様子をもっている。
背が高くすらりとして女狩人のように歩きながら、
彼女の微笑は穏やかで目は自信に満ちている。
もしあなたが、マダム、セーヌや緑なすロワールの
ほとりにある、真の栄光の国に行かれるのなら、
古い館を飾るのにふさわしい美女、
あなたは、鬱蒼とした隠れ家で、詩人らの心に
千のソネットを芽生えさせることになろう、あなたの
大きな目が彼らを黒人の召使らよりも従順にして。
60 ワガふらんきすかノ讃歌 FRANCISCAE MEAE LAUDES
60 ワガふらんきすかノ讃歌
新シキ弦ニヨリテ我ハ貴方ヲ歌ハム、
以下未訳