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28 踊る蛇 Le Serpent qui danse


         28 踊る蛇

なんて私は好きなのだろう、物憂げさん、
   これほど美しい君の体を見るのが、
ゆらめく布地のように、
   その肌がきらめくのが!

きつい香りのする
   奥深い君の髪、
青と褐色の波のある
   芳香と気まぐれの海のうえに、

ちょうど、朝の風に
   目覚める船のように、
夢想にふける私の魂は、
   はるかな空に向けて出航準備をする。
   
君の眼は、甘美も苦みも
   何も表さないし、
冷たい二つの宝石だ、
   それは金と鉄を混ぜている。

君が拍子をとって歩くのを見ると、
   くつろぎの美女、
まるで棒の先で踊る
   蛇のようだ。

怠惰の重荷で
   子供のような君の頭は
おさない象のように
   柔らかく揺れ、

君の体は傾き長々と横たわる。
   ひどく横揺れし
帆桁を水中に沈める
   細い船のようにして。

氷河がうなり溶けて
   増大された流れのように、
君の口の水が
   歯々の縁まで高まるとき、

私が飲んでいると思うのは、苦くて
   勝利者のボヘミヤのワイン、
私の心に星々をちりばめる
   液体の空!



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27 <波打つ真珠光沢の. . . ><Avec ses vêtements. . . >


     27 <波打つ真珠光沢の. . . >

波打つ真珠光沢の衣装をつけて、
彼女は歩く時でも、踊っているようだ、
長い蛇たちのように。それらは聖なる芸人たちが
棒の先に拍子をとって揺り動かしている。

砂漠の陰気な砂や青空のように。
二つとも人間の苦悩に無関心だ。
海のうねりによる長い網々のように
彼女は平然と展開している。

磨かれた彼女の眼は、魅力の鉱物でつくられ、
この奇妙で象徴的な自然のなかで、
その犯されない天使が古代のスフィンクスと交じり、

すべてが金、はがね、光、ダイヤモンドでしかなく、
そこで無用の星のように、永遠に輝くのは、
不妊の女の冷たい威厳。



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26 サレド女ハ飽キタラズ Sed non satiata

 
     26 サレド女ハ飽キタラズ

奇妙な女神。夜のように浅黒く、
麝香とハバナたばこの混じった香りがする。
ある呪術師、草原のファウスト博士、の作品、
黒檀の脇腹をした女魔法使い、真夜中の闇からの子、

私が好むのは、コンスタンスのワイン、阿片、ニュイの
ワインよりも、君の口の妙薬だ、そこで恋が気取って歩く。
君に向って私の欲望たちが団体で動き出す時、
君の眼は貯水池だ、そこは私の倦怠を飲み込む。

これらの大きな黒い両目、君の魂の風穴、から
オー哀れみのない悪魔! 私にあまり炎を注ぐな。
私は君を9回抱くための冥界の川ではない。

悲しや! しかも私はできない、みだらな復讐の女神、
君の熱意を打ち砕き、君を追いつめるために、
君の寝台の地獄において冥界の女神になることが!



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25 <君は全宇宙を. . . ><Tu mettrais. . . >


     25 <君は全宇宙を. . . >

君は全宇宙を君の閨房に移しそうだ、
みだらな女! 倦怠が君の魂を残酷にしている。
この奇妙な戯れに対して君の歯を鍛えるには、
毎日まぐさ棚に心臓が一つ必要だ。
君の眼は、店のように、
公の祭りの燃えさかる燭台のように輝き、
これ見よがしに借りものの力を使っている。
眼の美の法則を決して知らないで。

盲でつんぼの機械だ、残忍性では実り多い!
有益な器具、世界の血を飲む人、
どうして君は恥ずかしくないのか、どんな鏡の前でも
君の色香があせていくのを、どうして見なかったのか?
君が自分を物知りだと思っている、この悪の権威は
今まで自分を恐怖で尻込みさせたことがなかったのか、
隠された構想において偉大な自然が、
君を使う時に、オー女、オー罪の女王、
― 君、卑しい獣を、 ―天才を捏ね上げるために?

オー泥まみれの権威! 崇高な恥辱!



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24 <私は君をあがめる. . . ><Je t'adore. . . >


     24 <私は君をあがめる. . . >

私は君を崇める、夜の大空と同じくらいに。
オー悲しみの器、オー高貴で寡黙な女、
私は君、美しい女を愛する、私を避けるだけに一層。
そして君、私の夜の飾りが、私の両腕を
広大な青空から隔てる距離を、もっと皮肉を込めて
積み重ねているらしいだけに一層。

私は前進して攻撃し、よじ登って襲いかかる、
死骸をめざす蛆虫の一群のように。
そして私が執着するのは、容赦なく残忍なオー獣!
君がもっと美しい、その冷たさまでも!



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23 髪 La Chevelure


          23 髪

オーふさふさした髪、うなじの上まで波打っている!
オー巻き毛! オー香り、物憂さで満ちている!
恍惚! 今宵うす暗い寝室を
この髪のなかに眠るいくつもの思い出で満たすために、
私はこの髪をハンカチのように空中で振りたい!

物憂げなアジアと燃えるアフリカ、
遠い、いない、ほとんど亡くなった世界の全てが
君の深い所、アロマの森で生きている!
別の人々の心が音楽の上を漕ぎ進むように、
私のそれは、オーおまえ!、君の香りの上を泳いでいる。

私は向こうへ行こう。そこは木と人が、精気にあふれ、
酷暑の気候のもとに、久しくうっとりしている。
強い編毛が、私を連れ出す波であれ!
黒檀の海の君は、輝くばかりの夢を含んでいる。
帆、漕ぎ手、旗そしてマストについての。

よく響く港、そこで私の魂は、香り、音、色を
なみなみと飲むことができる。
そこで船々は、ゴールドとモアレのなかをすべり、
それらの巨大な腕々を開く。永遠の熱気が震える
清らかな空の栄光を抱きしめるために。

私は陶酔好きな私の頭を、この黒い海原に沈める。
そこにはもうひとつの海原が隠されている。
すると横揺れが愛撫する私の鋭敏な心は、あなたを
再び見つけることができるだろう。オー実り多い怠惰、
かぐわしい余暇の限りない揺らめき!

青い髪、暗闇を張りつめたテント、
あなたは私に広大でまるい空の青を返してくれる。
よじったあなたの髪の房々の、にこ毛の生えた辺りで
私は熱烈に酔いしれる、ココヤシの油と
麝香と瀝青のまじった芳香に。

久しく! いつも! 私の手は君の重い長髪のなかに
ルビー、真珠、そしてサファイアをまき散らそう、
私の願望に君が決して耳を貸さないことのないようにと!
君は、私が夢見るオアシスではないのか、そして
私が思い出のワインをじっくり飲む瓢ではないのか?



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22 異国の香り Parfum exotique


       22 異国の香り

両目を閉じ、秋の暖かな夕暮れに、
君の温かな乳房のにおいをかぐと、
幸せな浜辺が広がっているのが見える。
そこは単調な太陽の火がまぶしく照らしている。

怠惰の島、その自然は変わった木々や
おいしい果実をもたらしている。
男たち、その身体は細くたくましい、
そして女たち、その目は率直で驚かせる。

感じのいい気候へと君のにおいに導かれ、
帆やマストでいっぱいの港が見える。
それらは今も海の波によって疲れ切っていて、

タマリンドの香りが、
空中をめぐり、私の鼻孔をふくらませ、
私の魂のなかで、水夫たちの歌にまじっている間に。



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21a 宝石 Les Bijoux


       21a 宝石

いとしの女は裸だった、それも、私の心を知っていたので、
彼女はよく響く宝石類しか身につけていなかった。
その豪華な装い一式は、勝利者の様子を彼女に与えていた。
その様子はサラセンの女奴隷の幸運な日々を見せている。

踊りながら、その装いが活発でからかいの音を立てるとき、
金属と石の輝くこの世界は
陶酔で私を魅了する。それで私は
音が光に混ざる状況を熱烈に愛するのだ。

ところで彼女は横たわり、愛されていた。
そして寝椅子の上から満足げに微笑んでいた。
海のように深く優しい私の愛に、
彼女の方への、断崖に向かうように込みあげる愛に。

私に注ぐ両の眼、飼いならされた虎のよう、
ぼんやりと夢見がちに、彼女は色々なポーズを試していた。
しかも淫欲に結ばれた無邪気さは
さまざまな変身に新しい魅力を与えていた。

そして彼女の腕と脚、太ももと腰は、
油のように艶があり、白鳥のようにしなやかで、
私の透視する平静な眼の前をよぎった。
しかも彼女の腹と乳房は、私のブドウの房であり、

近寄ってきたものだ。悪の天使よりも甘えん坊で、
私の魂が置かれていた休息を邪魔するために、
そして私の魂を、静かに孤独に座っていた
水晶の岩から落すために。

髭の生えていない少年の上半身にアンティオペーの腰を
つないだのを、新しいデッサンによって見ると信じていた。
それほどその胴は骨盤を強調させていた。
鹿毛色と褐色の顔色への化粧は見事だった!

― そしてランプはあきらめて消え、
暖炉だけが寝室を照らし、
燃え立つ溜息を発するたびごとに、
その琥珀色の肌を血でいっぱいにしていた!



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21 美への賛歌   Hymne à la Beauté


       21 美への賛歌

君は深い天空から来るのか、深淵から出て来るのか、
オー「美」よ? 君の眼差しは、地獄のようで神々しく、
善行と犯罪を区別しないで注ぐ。
そのために君を葡萄酒と比べることができる。

君はその目に、夕日と暁を含んでいる。
君は香りを放つ、雷雨の夕方のように。
君のキスはほれ薬、君の口は古代の壺
それらは英雄を臆病にするし、子供を勇敢にする。

君は黒く深い穴から出て来るのか、天体から降りて来るのか?
魅せられた「運命」は、犬のように君のペチコートを追う。
君は気まぐれに喜びと災いの種をまき、
すべてを支配し何も責任を取らない。

「美」よ、君は死者たちの上を歩く、ばかにしながら。
君の宝石らのひとつ「恐怖」は、なかなか魅力的だ、
そして「殺人」は、君の好きな安宝石らのなかにあるが、
傲慢な君の腹の上で愛をこめて踊る。

目がくらんだカゲロウは、ロウソクの君に飛んで行き、
ぱちぱち音をたて、燃えて言う、「この炎を祝福しよう!」
そのあえぐ恋人は、美女の上に屈み
自分の墓を愛撫している瀕死の人のようだ。

君が天からか地獄からか来ようと、それが何だ、
オー「美」よ! 法外な、恐ろしい、無邪気な怪物よ!
もし君の目、君のほほえみ、君の足が、私の愛し
かつて知らなかった「無限」の扉を私に開くのならば?

サタンか神からの出か、それが何だ?「天使」か「人魚」、
それが何だ、もし君が、― ビロードの眼の妖精、
リズム、香り、ほのかな光、オーわが唯一の女王!―
全世界の醜さを減らし、瞬間ごとの重みを減らすならば?



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