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117 キューピッドと髑髏 L'Amour et le crâne


    117 キューピッドと髑髏
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「キューピッド」は「人類」の髑髏の上に
   座っている、
しかもこの玉座の上の未信者が
   厚顔な笑いで、

陽気に吹いているのはシャボン玉、
   それは空に上がっている、
エーテルの奥のさまざまな世界に
   つながるかのように。

輝いて弱々しいその球は
   大きく飛翔して
破裂する、そしてかぼそい魂を吐き出す、
   黄金の夢のように。

私は聞こえる、それぞれのシャボン玉に
   髑髏が懇願しうめくのが。
━━「この遊びは、冷酷でばかげているが、
   いつ終わるつもりなのか?

なぜなら君の残忍な口が
   空中にまき散らしているもの、
人殺しの怪物、それは私の脳みそ、
   私の血、私の肉だから!」



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116 シテールへの旅 Un Voyage à Cythère


    116 シテールへの旅

私の心は、鳥のように、とても嬉しく飛び回り、
帆綱のまわりで自由に滑空していた。
船は横揺れしていた、雲のない空の下、
光り輝く太陽に酔わされた天使のように。

何だ、あの陰気で黒い島は? ━━シテールだ、
我々に誰かが言う、歌のなかにある有名な国、
月並みな黄金郷、すべての老けた独身男の、
見なさい、要するに、貧しい土地だ。

━━ 島、甘い秘密と心の祝祭の!
古代のヴィーナスの美しいまぼろしは
君の海の上に芳香のように漂う、
そして人々を恋と悩ましさで満たす。

美しい島、緑の桃金嬢があり、たくさんの花々が咲き、
あらゆる国民によって永久に敬愛されている、
そこでは敬慕する人々のため息が
巡っている、まるでバラ園にある香

それとも森鳩の終わりのない鳴き声のように!
━━ シテールは最もやせた土地でしかなかった、
鋭い叫びによって乱された石だらけの荒れ地。
ところが私がかいま見たのは、奇妙な物だった!

それは小さな林の日陰がある神殿ではなかった、
そこでは花を愛する若い巫女が、
秘めた熱でその身を焦がし、行きずりの
そよ風にそのローブを少し開けながら、行くのだが。

それではなく、岸にかなり近くを走って、
白い帆といっしょに鳥たちを騒がせていたとき、
我々が見たものは、三本に分かれた絞首台、
空に黒く浮かび上がっていた、糸杉のように。

凶暴な鳥たちの一部は、餌の上にとまり、すでに
熟したひとりの吊るされ人を激怒して解体していた、
それぞれが、汚れたくちばしを、道具のように、
その腐肉の血がしたたる隅々に打ち込みながら。

その両目は二つの穴だった、突き破られた腹から
重い腸がその人から太腿の上に流れ出ていた、
そして死刑執行鳥らは、ぞっとする楽しみに満腹だが、
くちばしを使って完全にその人を去勢してしまっていた。

その足の下には、ねたむ四つ足の一群が、
鼻づらを高くして、くるくる回りうろついていた。
一匹のひときわ大きい獣が、真ん中で動いていた、
補助者に囲まれた死刑執行人のように。

シテールの住人、これほど美しい空の申し子、
黙って君はこれらの侮辱を受けてきた、
ひどい崇拝の償いとして、
そして君に墓を禁じた罪の償いとして。

滑稽な吊るされ人、君の苦悩は私と同じだ!
私は感じた、揺れ動く君の手足を見て、
嘔吐のように、古い苦悩からの胆汁の長い河が
私の歯の方へ込み上げてくるのを。

とてもいとしい思い出を持つ哀れな奴、君の前で
私は感じた、かつて私の肉をあれほど噛みつぶした
苦しめる烏と黒い豹の
すべてのくちばしとすべての顎を。

━━ 空は魅力的だった、海は平穏だった。
私にとって、それ以降すべては黒く血なまぐさかった、
アー!そして私は、厚い屍衣を着ているように、
心をその寓意のなかに埋葬した。

君の島で、オーウェヌス!私は象徴的な垂直の絞首台しか
発見しなかった、そこで私の心象はぶら下がっていた . . .
━━ アー!神様!私に与えてください、
私の心と私の体を嫌悪なく見つめるという力と勇気を!



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115a 吸血鬼の変身 Les Métamorphoses du Vampire

     115a 吸血鬼の変身

女はその間、イチゴの口で、
燠火の上の蛇のように身をよじり、
コルセットの骨の上で両乳房をもみながら、
麝香が全くしみこんだ言葉を流れるままにしていた。
━━「私はね、濡れた唇をしていて、知っているの、
古い良心をベッドの奥になくす技法を。
私はどんな涙も私の勝ち誇る乳房の上で乾かすし、
老人を子供の笑いで笑わせる。
私が裸でヴェールもないのを見る人のために、
私は、月、太陽、空、星の代わりになる!
いとしい学者、私は快楽においてとても博学なので、
恐れられる私の両腕で男を私が窒息させるとき、
あるいは私が、内気で自由奔放、弱くて確固としているけど、
私の胸を噛むことにゆだねるとき、
動揺で気絶するマットレスの上で、
不能の天使たちは地獄に落ちるの、私のために!」

彼女が私の骨の髄まで吸いつくし、
それから物憂げに私が彼女に愛のキスを返そうと
彼女の方を向いたとき、なんと私が見たものは、
両脇がべたべたした革袋だけ、膿に満ちている!
私は両目を閉じた、恐怖の寒気のなかで、
そして私が生き生きした光に目を開けたとき、
私のそばで、血を蓄えていたように見えた
力強いマネキンに代わって、
骸骨の破片が雑然と震えていたのだ、
それらが自ずから発していたのは、風見鶏の叫び、
あるいは看板のか、鉄の細い棒の先にあり、
風が揺り動かしている、冬の夜々ずっと。



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115 ベアトリーチェ La Béatrice


     115 ベアトリーチェ

焼かれて、緑のない、灰まみれの地表のなかで、
私がある日、自然に対し不満を言い、
あてもなくさまよいながら、わが思考の短刀を
わが心の上でゆっくり研ぎ澄ましている時、
私は真昼に、嵐を帯びた不吉な雲が
私の頭上に降りて来るのを見た、
その雲が運んでいたのは、一群の手に負えない悪魔ら、
残酷で詮索好きな小びとらのようだ。
奴らは冷ややかに私を眺め始めた、
そして、狂人に見とれる通行人のように、
互いに笑い、ささやき合うのが聞こえた、
多くの合図、多くの目くばせを交わしながら。

━━「ゆっくり見物しよう、あの戯画で
ハムレットの影法師を。まねしているのは、
彼のポーズ、はっきりしない眼差し、風になびく髪だ。
大いに哀れではないのか、この享楽主義者、
このろくでなし、このあぶれ役者、このごろつきが、
自分の役を巧みに演じられるからといって、
自分の苦痛の歌に、鷲やコオロギや小川や花々の
関心を引きたがっていたり、そうした古い術策を
考案した我々にまで、聴衆に向かう長ぜりふを
わめいて語っているのを見ると?」

私はできたであろうに(私の誇りは山と同様に高く
厚い雲や悪魔らの叫びを支配するが)
この上ない私の頭を単にそらすことが、
もし私がみだらな彼らの間に、
罪、それはなんと太陽をよろめかせなかった!
たぐいまれな眼差しをもつわが心の女王を見なかったなら、
彼女は彼らといっしょに私の暗い苦悩を嘲笑し、
ときどき彼らにみだらな愛撫を注いでいたのだが。



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114 寓意 Allégorie


       114 寓意

それはある女、美しく様子が豊かだ、
彼女のワインのなかに彼女の髪を垂らしたままで。
恋の爪、賭博場の毒、すべては
滑り、切れ味が鈍る、皮膚の花こう岩に対して。
彼女は「死」を笑う、そして「放蕩」をものともしない、
それらの怪物らは、破壊する戯れのなかで、
いつも掻き削りなぎ倒す、それでもその手は
堅固で直立したその体の荒削りな威厳を尊重した。
彼女は女神で歩き、スルタンの妃で休む。
彼女は快楽のなかにマホメット教の信仰を持っている、
そして広げた両腕のなかに、そこは乳房にあふれているが、
彼女は目で人間の仲間を呼び出す。
彼女は信じている、彼女は知っている、不妊のこの処女
にしても世界の進行に必要であって、
肉体の美が崇高な恵みであり、
すべての汚辱から赦免を引き離すことを。
彼女は「地獄」を知らない、同様に「煉獄」も、
そして暗黒の「夜」に入る時が来たら、
彼女は「死」の顔をじっと見るだろう、
新生児のように、━━ 憎しみなしに後悔なしに。



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113 血の噴水 La Fontaine de sang


      113 血の噴水

ときどき私の血がどっと流れるように思える、
リズミックな嗚咽をする噴水のように。
私は血が長いざわめきを伴って流れるのを聞く、
しかし体を触っても無駄だ、傷は見つからない。

都市を突き抜け、決闘場のなかのように、
血が流れて行く、舗石を小島に変えながら、
それぞれの生き物の渇きをいやしながら、
そして自然を赤くいたるところで染めながら。

言葉たくみなワインに、私はよく頼んだ、
私をむしばむ恐怖を、一日のあいだ眠らせほしいと。
ワインは目をもっと明るくし、耳をもっと鋭くする!

私は恋愛に忘れる眠りを探し求めた、
しかし恋愛は私にとって針のマットレスに過ぎない、
あれらの残酷な娘たちに飲ますだけだ!



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112 二人の優しい姉妹 Les Deux Bonnes Soeurs


     112 二人の優しい姉妹

「放蕩」と「死」は、二人の愛想のいい娘たち、
キスを惜しまないし、健康に富んでいる、
その腹はいつも処女で、ぼろ着をゆったりまとい、
切りのない仕事のもとに、一度も出産したことがない。

不吉な詩人は、各家庭の敵で、
地獄のお気に入りで、不遇の宮廷人だが、
その彼に、墓と売春宿が青葉の生け垣のなかで
提示するのは床、決して悔恨が訪れたことのないもの。

そして棺桶と寝室が、豊かな冒瀆表現状態で、
私たちに、次々と、二人の優しい姉妹のように、
提供するのは、すさまじい快楽とぞっとする甘美。

いつ君は私を埋葬したいのか、汚らわしい両腕の「放蕩」?
オー「死」、魅力ではそいつのライバル、いつ君は来るのか、
悪臭を放つそいつの桃金嬢に、君の黒い糸杉を接ぎ木しに?



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111 地獄に落とされる女たち Femmes damnées


    111 地獄に落とされる女たち

物思いに沈む家畜のように、砂の上に横になり、
彼女らは大海原の水平線の方へ目を向け、
彼女らの足と足が求めあい、手と手が近づき、
甘美な悩ましさと苦い戦慄を感じている。

ある女たちは、長い打ち明け話に心が夢中になり、
小川がさえずる木立の奥で、
臆病な少女期の恋を拾い読みし始め、
若い低木の生木を彫っている。

他の女たちは、シスターのように、ゆっくり厳かに
亡霊たちにあふれる岩山を越えて行く、
そこで聖アントニウスは溶岩のように出現するものを
見た、彼らの誘惑である緋色で裸の乳房たちだ。

ある人たちは、崩れかかった松やにの微光のなか、
古い異教の洞窟の、無言のくぼみで、
君を呼んでいる、遠吠えするその人たちの熱を救うようにと、
オー、バッカス、古くからある悔恨を眠らせる者!

そして他の人たちは、その胸がスカプラリオを愛しているが、
その人たちの長い衣の下に鞭を隠し、
暗い森と孤独な夜々のなかで、
快楽の泡を責め苦の涙に混ぜ合わせている。

オー処女たち、オー悪魔たち、オー怪物たち、
オー殉教者たち、現実を軽蔑する偉大な精神たち、
無限を探究する女たち、信心家たちそして半獣神たち、
ある時は叫びに満ち、ある時は涙に暮れる、

君たちを私の魂は追いかけたのだ、君たちの地獄のなかで、
哀れな姉妹たち、私は君たちを同情するのと同じく愛する、
君たちの陰鬱な苦悩のために、満たされない渇きのために、
そして愛の壺々のために、それらは偉大な心がいっぱいだ!




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