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Ⅲ  額縁 Le Cadre


            Ⅲ

            額縁

美しい額縁は絵画に、その絵画が
褒めちぎられた筆づかいであろうとも、
広大な自然からそれを孤立させていて、
何か魅了する一風変わったものを付け加える。

そのように、アクセサリー、家具、金属、金箔は、
彼女の稀な美しさにちょうど合っていた。
何ひとつ彼女の完全な輝きを曇らせるものはなく、
すべてが彼女の縁飾りになっているようだった。。

すべてが彼女を愛したがっていると、
時々彼女は信じさえもしていたようだ。彼女が
気持ちよさそうに溺れさせていたのは、彼女の裸体、

繻子と下着からのキスのなかで。
そして、ゆっくりとまたは急激に、それぞれの動きに
高まっていたのは、猿の子供っぽい魅力。



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Ⅱ 香り Le Parfum


            Ⅱ

            香り

読者、君は時々吸ったか、
陶酔してゆっくり味わうように、
教会を満たす粒の香りを、
または、匂い袋からの根深い麝香を?

魔法の、深い魅力、それは現在のなかの
復元された過去が我々を酔わせるのだ!
したがって恋する男は熱愛する肉体から
思い出の甘美な花を摘む。

彼女の髪から、それはしなやかで重く、
生き生きした匂い袋、閨房の香炉だが、
野生と野獣の匂いが立ち昇っていた、

そして衣服から、それはモスリンかビロードで、
純粋な彼女の若さが全てしみ込んでいるが、
毛皮の香りが発散していた。



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38 幻影 Un fantôme Ⅰ 暗闇 Les Ténèbres

        
          38 幻影

            Ⅰ

            暗闇

はかり知れない悲しみの穴倉のなかで、
そこでは「運命」が私をすでに追いやっている、
そこではバラ色で明るい光が決して入らない、
そこでは不機嫌な女主人の「夜」と一緒の孤独で、

私は、ある嘲る「神」によって、アー!、暗闇に
絵を描くことを強いられた画家のようだ、
そこでは陰気な食欲のある料理人で、
私は、自分の心臓を煮て食べる、

ときどき輝き、身を伸ばし、横になる
ひとつの亡霊は優美と華麗を見せている。
東洋風の夢見がちな様子で、

それが全身を現すとき、
我が美しい客を私は覚えている、
「彼女」だ! 黒い、それでも輝いている。




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37 取りつかれた男 Le Possédé


      37 取りつかれた男

太陽は喪のヴェールで覆われた。そのように、
オー我が命の「月」!、影で君を包みなさい。
好きなように眠るか喫いなさい、黙って暗くいなさい、
そして「倦怠」の深淵にすべてを沈めよ。

私はそんな君が好きだ! それでも、もし君が今日
薄暗がりから出てくる食の天体のように、
「狂気」あふれる場所で羽根を広げて歩きたいのなら、
それも結構! 魅力の短剣、鞘からおどり出よ!

君の瞳を灯せよ、シャンデリアの炎で!
欲望を点火せよ、無礼な者たちの視線に!
君のすべては私の快楽だ、不健全でも活発でも。

君が望むものになるがいい、黒い夜、赤い曙。
私の震える全身の線維の一本でも叫ばないものはない、
「オー我が愛しのベルゼビュート、君が大好きだ!」



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36 バルコニー Le Balcon


       36 バルコニー

思い出を創る人、愛人のなかの愛人、
オー君、すべての我が快楽!オー君、すべての我が務め!
君は思い出しなさい、愛撫の美しさ、
暖炉の心地よさ、夜々の魅惑を、
思い出を創る人、愛人のなかの愛人!

それらの夜々、石炭の炎に照らされていた、
それらのバルコニーの夜々、バラ色の靄に包まれていた。
なんと君の胸が甘美で、なんと君の心が優しかったことか!
私たちは不滅の事をよく語った、
それらの夜々、石炭の炎に照らされていた。

なんと刻々の太陽は美しいことか、暑い夕暮れのなかで!
なんと空間は深く、なんと心は力強いことか!
君の方へ身を傾ければ、あがめられる女たちの女王、
私は君の血の香りをかぐ気がしていた。
なんと刻々の太陽は美しいことか、暑い夕暮れのなかで!

夜は隔壁のように厚くなっていた、
私の眼は闇のなかに、君の瞳をさぐりあて、
君の吐息を飲んだものだ、オー甘美! オー毒!
君の両足は、親しげな私の両手のなかで眠っていた。
夜は隔壁のように厚くなっていた。

私は幸せの一瞬一瞬を思い起こす術を知っている、
そして過去を再び生きている、君の膝の間にかがんで。
というのは、君の物憂げな美しさを求めても何になろう、
君のいとしい体、君のこれほど甘美な心のほかに。
私は幸せの一瞬一瞬を思い起こす術を知っている。

あれらの誓い、あれらの香り、あれらの無限のキスは、
我々の測鉛を禁じられた深淵から、蘇るだろうか、
太陽が深い海の底で洗われた後、
若返って空に昇るように?
― オー誓い! オー香り! オー無限のキス!



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35 一騎打ち Duellum


       35 一騎打ち

二人の戦士は向き合い駆け回った。彼らの武器は
空中にきらめきと血を跳ね上げた。
これらの遊戯、これらのチャリンという剣の音は、
泣いている恋にとらわれた、青春の大騒ぎだ。

剣は折れる、我らの青春のように、
我が恋人! だが歯、鋭い爪が、
裏切った剣や短剣の敵討ちをすぐにする。
― オー 痛手を負った恋による賢明な心の激高!

サーバルキャットや雪豹の出没する峡谷に
我らが勇士らは、意地悪に取っ組み合って転げ落ちた、
彼らの皮膚は乾いた茨に花で飾るだろう。

― この裂け目は、地獄だ、我らの友が一杯いる!
後悔なくそこに転げ落ちよう、冷酷無情なアマゾネス、
我らの憎悪の激しさを不滅のものにするために!



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34 猫 Le Chat


        34 猫

来なさい、私のきれいな猫、恋する私の心臓の上に。
  引っ込めなさい、君の足の爪は、
そして私を飛び込ませよ、金属とメノウの混ざった
  君の美しい眼のなかに。

私の指が君の頭や君の柔軟な背を
  心ゆくまで愛撫する時、
私の片手が電気を帯びた君の体に
  触る喜びに酔う時、

私は心のなかに私の妻が見える。彼女の視線は、
  愛らしい獣、君の視線のように、
深く冷たく、投げ槍のように切り、裂く、

  そして、両足から頭まで、
巧妙な空気、危険な香りが
  彼女の褐色の体の周りを漂っている。



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33 死後の後悔 Remords posthume


       33 死後の後悔

黒大理石で建てられた墓の底に、
我が愁いの美女、君が眠るであろう時、
そして閨房として、館として、雨の滴る
地下墓所、虚ろな墓穴でしか君が持てないであろう時、

墓石が、君の臆病な胸と、
すてきな無頓着が柔らかくする両脇腹を圧迫していて、
君の心臓の脈打ち欲することを、
君の両足の奔放に駆け走ることを妨げるであろう時、

その墓は、私の無限の夢の腹心だが、
(なぜなら墓はいつも詩人を理解するであろうから)、
眠りが追放されたそれら多大な夜々のあいだ、

君に言うだろう、「何になる、不完全な遊女、死者たちが
嘆いているものを、あなたが知らなかったとしても?」
― そして蛆虫は君の肌をかじるだろう、後悔のように。



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32 <ある夜、私がひどい. . . > <Une nuit que j’étais. . .>


    32 <ある夜、私がひどい. . . >

ある夜、私がひどいユダヤ女のそばに、
死体に寄り添う、横になった死体然でいたとき、
私はこの身を売った肉体のそばで、急に思い始めた、
私の欲望が自ら禁じている、その悲しい美女のことを。

私が思い浮かべていたのは、生まれながらの彼女の威厳、
力強さと優美さで武装された彼女の眼差し、
彼女の髪。それは芳香の兜であり、
その記憶が私を愛へと復活させる。

というのは、私は熱烈に君の高貴な体にキスしただろうし、
君のひんやりした足から黒い編み毛まで
深い愛撫の宝を展開しただろうから、

もし、ある晩、努力しないで得られた一滴の涙で、
君がただ、オー残酷な女たちの女王!、
冷たい瞳の輝きを曇らせることができたなら。



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31a 忘却の川 Le Léthé


       31a 忘却の川

来なさい、私の心臓の上に。残酷で聞く耳のない人、
愛される虎、物憂げな雰囲気の怪物。
私は震える指々を長く沈めていたい、
君の重いたてがみの密なところに。

君の香りに満ちたペチコートのなかに
私の痛い頭をうずめ、
嗅いでいたい、枯れた花のような、
過ぎ去った私の恋の懐かしい臭いを。

私は眠りたい! 生きるよりは眠りたい!
死と同じほど甘美な眠気のなかで、
私は悔いなくキスを並べよう、
銅のように艶のある君の美しい体に。

私の静められた嗚咽を飲み込むのに
君の寝床の深淵は有害だ。
強い忘却は君の口に居ついている、
それで忘却の川は君のキスのなかを流れている。

私の運命に、今や私の快楽だが、
私は従おう、救霊予定者のように。
従順な殉教者、無実の受刑者、
その熱意が刑罰をあおっている者だ。

私の恨みを溺れさせるために、私は吸おう、
憂さ忘れの薬を、よい毒人参の汁を、
とがったこの胸の魅惑的な二つの先端で。
そこに一度も心を閉じ込めたことはないが。



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31 吸血鬼 Le Vampire


        31 吸血鬼

君、ナイフの一撃のように、
悲しげな私の心に入った人。
君、悪魔の群れのように強く、
浮かれ、着飾って、来た人、

侮辱された私の精神を
君のベッドと君の領地にする人。
― 破廉恥、それに私は結ばれている。
徒刑囚と鎖のように、

頑固なばくち打ちと賭博のように、
酒飲みと酒瓶のように、
死骸と蛆虫のように。
― 呪われてあれ、呪われてあれ、君は!

私は素早い剣に
私の自由を勝ち取ってくれと頼んだ。
そして私は危ない毒薬に
私の臆病さを救ってくれと命じた。

アー! 毒薬と剣は
私を軽蔑し、私に言った、
「呪われた君の隷属状態から君を
持ち上げる値はない、

愚か者! ― 彼女の支配から
我々の努力が君を解放しても、
君の接吻は復活させるだろう、
君の吸血鬼の死体を!」



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30 深淵ヨリ我叫ビヌ De profundis clamavi


     30 深淵ヨリ我叫ビヌ

私は君の同情を哀願する、君、私の愛する唯一の人、
私の心が落ちた暗い深淵の底から。
これは鉛色の地平にある陰鬱な世界、
そこに漂うのは恐怖と冒瀆の言葉。

熱のない太陽は六箇月、見おろし
他の六箇月は、夜が地上を覆う。
それは、極地よりも裸同然の国。
― 獣も、小川も、草木も、森もない!

さて、氷の太陽の冷酷な厳しさ、
そしてはるか昔のカオスに似たこの無限の夜、
この世にそれらをしのぐ恐怖はない。

私はこの上なく卑しい動物たちをうらやむ。
かれらは馬鹿のような眠りに没頭できる。
非常にゆっくりと時の桛は繰られる!



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29 腐った死骸 Une charogne


        29 腐った死骸

思い出しなさい、いとしい人、心地よい夏の
  あの晴れた朝、我々が見た物を。
小道の曲がり角に、忌まわしい腐った死骸が
  小石のまかれたベッドの上で、

両足を空中にあげ、好色女のようだが、
  焼けて毒をにじませ、
無頓着で冷笑的な仕方で
  悪臭に満ちた腹を開いていた。

太陽はその腐った物の上に光り輝いていた。
  ほとんどそれを程よく焼くために、
偉大な「自然」が一緒につなげていた物の全てを
  そこに百倍にして返すために。

そして天は見事な死骸が花のように
  咲いているのを眺めていた。
悪臭はあまりにも強く、草の上に
  あなたは気絶すると思った。

蠅たちは腐敗したその腹の上をぶんぶん飛んでいて、
  そこから蛆虫らの黒い大隊が外へ出てきていた。
それらは生きているその残骸をつたって
  濃い液体のように流れていた。

すべてそれらは、波のように下がり上がりして、
  ぱちぱちと飛び出していた。
言うなれば、その肉体は、あいまいな息吹でふくらみ、
  自ら繁殖させながら生きていたのだろう。

そしてその世界は奇妙な音楽を発していた、
  流水や風のように。
または、穀粒のように。リズミカルな動きのその選別人が
  蓑のなかで、それをゆさぶり回している。

形は消え、もはや夢で、達成するには遅い
  下絵でしかなかった。
画布の上に忘れられ、それを画家が
  思い出によってのみ仕上げるのだが。

岩に隠れて、不安げな雌犬が
  怒った目で私たちを見ていた。
その犬が骸骨にあって口から落した
  肉片を取り戻す時をうかがいながら。

― しかしながら、あなたはその汚物、
  恐ろしく悪臭を放つ物に似るだろう。
我が眼の星、我が自然の太陽、
  我が天使にして我が情熱のあなたも!

そうです! そのようにあなたもなる、オー優美の女王。
  臨終の秘跡の後、
あなたが草と開花の下へ行き、骸骨らの間で
  黴が生えるときに。

その時、オー我が美人! あなたにキスを浴びせる
  害虫に言いなさい、
私の分解された恋愛の、形と神聖な本質を
  私は守っていると!



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