79 妄想 Obsession
79 妄想
偉大な森、君は大聖堂のように私を怖がらせる。
君はパイプオルガンのようにうなる。そして我々の
呪われた心、古びた喘鳴で震えている永遠の喪の
部屋のなかで、君の「深淵ヨリ」の木霊が答える。
私は君を憎む、「大海」! 君の跳躍と君の喧騒、
私の精神はそれらを自分のなかに再び見いだす。
敗北した男の、嗚咽と悪罵に満ちたその苦い笑い、
私はそれが海の巨大な笑いのなかに聞こえる。
なんて君は私を気に入ることだろうか、オー夜!
星がないならば、その光が知られた言語を話すのだが!
私は空虚と暗黒と赤裸を求めているから!
だが暗闇はそれ自体画布であり、
そこでは親しい眼差しをした今は亡き人々が、
私の眼から幾千となく噴き出ては生きている。
78 憂鬱 Spleen
78 憂鬱
低く重い空が、蓋のように、長いアンニュイに
襲われてうめいている精神にのしかかるとき、
それも地平線のすべての範囲を包みこみ
夜よりも陰気な黒い日光を我々に注ぐとき、
大地が湿った牢獄に変えられるとき、
そのなかは「期待」が、コウモリのように、
臆病な翼で壁々をしだいに打ちつけ、
腐った天井に頭もぶつけているのだが、
雨が途方もなく長引き、
広大な監獄の鉄格子に似ているとき、
そして不快なクモどもの無言の群衆が、
我々の脳の奥に網を張りに来るとき、
鐘々が突然、猛烈に跳びはねて、
天に向かって、恐ろしいうなり声を放っている、
まるで祖国をなくした流浪の霊たちのようだ、
頑強にうめき声をあげ始めていて。
― 一方、霊柩車の列が、太鼓や音楽なしで、
私の魂のなかをゆっくり通り過ぎている。「希望」が、
打ち負かされ、泣き、そして残忍で横暴な「苦悶」が、
私のうなだれた頭蓋のうえに、その黒い旗を立てる。