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92 盲人たち Les Aveugles

       92 盲人たち

彼らを見つめよ、わが魂、彼らは本当に恐ろしい!
人体模型に似て、なんとなく滑稽だ、
夢遊病者のように、ぞっとするし、奇妙だ、
彼らの暗黒の眼球をどことも知れず投げかけていて。

彼らの目は、そこでは神からの輝きが旅立ったが、
まるで遠くを見ているように、空を
仰いだままだ。人々は彼らが重い頭を敷石の方へ
夢見るようにかしげているのを決して見ない。

彼らはそうして無限の暗闇を渡っている、
それは永遠の沈黙の兄弟だが。オー都市!
私たちのまわりで君が歌い、笑い、わめく間に、

それは残虐なまで快楽に夢中だが、見ろ!私ものろのろ行く!
しかし、彼らよりも茫然自失だ、私は言う、何を彼らは
「天」に求めているのか、それらすべての盲人たち?





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91 小さな老女たち Les Petites Vieilles

       91 小さな老女たち
       ヴィクトール ユゴーに

            Ⅰ
古い都市の曲がりくねった襞で、その都市では
すべてが、おぞましいものでさえ、魅惑に変わるが、
私の避け難い気質に従い、私は待ち伏せするのだ、
老化しているが魅力のある奇妙な生き物たちを。

それらの脱臼した怪物たちも、昔は女、
エポニーヌやライスだった! 怪物たち、壊れて、猫背で、
ねじれているが、それらを愛そう! まだ人間なのだ。
穴のあいたペチコートか冷たい生地をまとい

彼らは這っている、不公平な北風に鞭打たれ、
乗合馬車の転がる激しい音に震えながら。
聖遺物のように、彼らの脇腹に抱きしめているのは
小さな手提げ。花や判じ絵で刺繍されている。

彼らは小刻みに動く、マリオネットのように。
苦しげに歩く、けがした動物がするように、
あるいは踊りたくないのに踊るのだ、哀れな小鈴たち
そこでは無慈悲な「悪魔」が取りすがる! みんな腰が

曲がっている、彼らは錐のような目をもち、
それは夜に水が眠る穴のように光っている。
彼らは小さな女の子の神々しい目をもつ、
その子は輝き渡るものすべてに驚き笑う。

― あなたは気づいたか、老女の多くの棺桶が
子供のそれとほぼ同じくらい小さいことを?
博学の「死」は似たそれらの柩のなかに
奇妙で心を奪う趣味の象徴を置く、

そして虚弱な亡霊がパリの蟻集している
タブローを横切っているのを私が気づくとき、
その壊れやすい存在は、新しい揺りかごの方へゆっくりと
立ち去っているのだと、私にはいつも思える。

私が幾何学に思いを巡らし、
不協和なこれらの手足を見ていて、
職人は何度これらの体を収める箱の形を
変えなければならないかと、私が探らない限りだが。

― これらの目は井戸だ、百万の涙でできている、
坩堝だ、それは冷えた金属がきらめいた . . .
これらの神秘の目は、抗しがたい魅力をもっている、
厳しい「不幸の女神」の乳で育った者には!

            Ⅱ
今はなきフラスカティ賭博場の、恋するウェスタの巫女。
喜劇の女神タレイアの巫女、アー! 埋められた
プロンプターだけがその名を知る。有名な軽薄女、
かつてはティヴォリが彼女の盛りに日陰を作った、

すべての女たちは私を酔わせる! だがそれらのかよわい
存在のなかには、苦痛から蜜を作るので、あの人たちに
翼を貸していた「献身」に向かって言った女がいる、
力強いヒッポグリフ、私を天まで連れて行け!と。

ある女、祖国によって不幸の試練をうけた、
他の女、彼女に夫が苦痛をかけすぎた、
他の女、彼女の子によって刺されたマドンナ、
すべての女たちは彼女らの涙で大河をなしただろう!

            Ⅲ
アー!なんと私はこれらの老女たちに付きまとったことか!
なかでもある女は、沈む太陽が
赤い傷だらけの空を血まみれにしているとき、
考え込み、ひとりベンチに座っていた、

聴くのは金管が豊かな音楽会のひとつ、
兵士たちは我々の公園をときどき音楽会で浸してしまう、
しかも音楽会は、元気の回復を感じる黄金のそれらの宵の
なかで、都会人の心になんらかの英雄的精神を注いでいる。

その女は、まだ垂直で、誇らしく、規律を感じていて、
活発なその軍歌を貪るようにすすっていた。
彼女の目はときどき老いた鷲の目ように開かれていた。
彼女の大理石の額は月桂樹用に作られる空間をもっていた!

            Ⅳ
そのようにあなた方は歩んで行く、自制的で嘆かないで、
生きている都市の混沌を横切って。
血のでるハートの母、高級娼婦、あるいは聖女、
彼女たちの名前はかつて万人によって言及されていた。

あなた方、優雅であった、あるいは栄光であったが、
今は誰もあなた方を覚えていない! 無作法な酒飲みが
通りすがりにからかいの愛で、あなた方を侮辱する。
あなた方のすぐ後ろで飛び跳ねるのは、卑怯で下劣な子供だ。

生きているのが恥ずかしい、皺くちゃな影法師、
臆病で、背中を低くして、壁に沿って行く。
そして誰も挨拶をしない、奇妙な運命のあなた方に!
人間の残骸、永遠のために熟している!

だがこの私、遠くから優しくあなた方を見守る、心配な目で、
あなた方のふらついた歩みに注目して、まるで私があなた方の
父であるかのように、オー素晴らしい! 
私はあなた方に知られずに隠れた快楽を味わう。

私はあなた方のうぶな情熱が花開くのを見る。
暗くても明るくても、私はあなた方の失われた日々を生きる。
数を増した私の心は、あなた方のすべての悪徳を享受する!
私の魂は、あなた方のすべての美徳で輝く!

老朽の人々! 我が同類! オー同種の脳!
私はあなた方に毎晩、盛大な別れをする!
どこにいるのか、あなた方は明日に、八十歳のイブたち、
彼女たちに神の恐ろしい爪が重くのしかかっているが?



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90 七人の老人 Les Sept Vieillards


        90 七人の老人
       ヴィクトール ユゴーに 

蟻集している都市、都市は夢に満ちている、
そこでは妖怪が白昼に通行人を呼び止める!
秘密というものは、そこらじゅう樹液のように
流れるのだ、その強い巨人の密接な管々のなかを。

ある朝、寂れた通りで
家々が、もやがそれらの高さを伸ばしていたが、
増水した流れの両岸のように見えていたその間、
それも、役者の心と似た書割、

黄色く汚い霧がすべての空間にあふれていた間、
私はたどっていた、主人公のように神経を緊張させ、
もう疲れている私の魂と議論をしながら、
重い砂利馬車に揺さぶられている場末の町を。

突然、一人の老人が、その黄ばんだぼろ着は
雨がちな空の色にそっくりで、
その目に光る邪悪がなかったなら、
その様子は施し物を雨と降らせたであろうが、

私の前に現れた。その瞳はまるで胆汁に浸された
ようだった。目つきは氷霧を研ぎ澄まし、
長いあごひげは剣のようにぴんと張って、
ユダのひげのように、突き出ていた。

彼は腰が曲がっているのではなく、折れていた、
背骨は足と完全に直角を作っていた、
だから杖は外観を仕上げていて、
彼に与えていたのは、その体つきと

不具の四足動物か三本足のユダヤ人の不器用な歩み。
雪やぬかるみに彼は足をしだいに取られていった、
まるで古靴で死者たちを踏みつぶしていたようだ、
世界の人々に無関心というよりは、敵意があった。

彼のような人が続いて来た。ひげ、目、背、杖、ぼろ着。
同じ地獄から来た、百歳のこの双子を区別する特徴は
何もなかった。しかもこの異様な亡霊たちは
同じ歩みで謎の行き先へ歩いていた。

いったい私はどんなひどい陰謀の的になったのか、
あるいは、どんな悪意の偶然が、このように
私を辱めたのか? というのは、私は七回刻々と
数えた、この不吉な老人を、その人は増えていた!

私の不安を嘲笑し、親しいわななきに
襲われない人は、よく思い浮かべるがいい、
あれほどの耄碌にもかかわらず、あれら七人の
醜悪な怪物らは、なんと永遠の相を持っていた!

私は死なずに八人目を凝視できただろうか、
瓜二つで、峻厳で、皮肉で、運命の人で、
自身が息子であり父の嫌な不死鳥だが?
― それで私は地獄のような行列に背を向けた。

ものが二重に見える酒飲みのように激しく苛立って、
私は家に帰り、扉を閉じたのだ、恐怖にかられ、
混乱し、凍え、精神は熱狂し混濁し、
神秘と馬鹿げたことに傷つけられていた!

むなしく私の理性は舵を取ろうとしていた。
嵐はそれらの努力を遊びながら困らせ、
私の魂は踊っていた、踊っていた、古い平底船、
帆柱なく、化け物のようで岸のない海の上で!




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