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90 七人の老人 Les Sept Vieillards


        90 七人の老人
       ヴィクトール ユゴーに 

蟻集している都市、都市は夢に満ちている、
そこでは妖怪が白昼に通行人を呼び止める!
秘密というものは、そこらじゅう樹液のように
流れるのだ、その強い巨人の密接な管々のなかを。

ある朝、寂れた通りで
家々が、もやがそれらの高さを伸ばしていたが、
増水した流れの両岸のように見えていたその間、
それも、役者の心と似た書割、

黄色く汚い霧がすべての空間にあふれていた間、
私はたどっていた、主人公のように神経を緊張させ、
もう疲れている私の魂と議論をしながら、
重い砂利馬車に揺さぶられている場末の町を。

突然、一人の老人が、その黄ばんだぼろ着は
雨がちな空の色にそっくりで、
その目に光る邪悪がなかったなら、
その様子は施し物を雨と降らせたであろうが、

私の前に現れた。その瞳はまるで胆汁に浸された
ようだった。目つきは氷霧を研ぎ澄まし、
長いあごひげは剣のようにぴんと張って、
ユダのひげのように、突き出ていた。

彼は腰が曲がっているのではなく、折れていた、
背骨は足と完全に直角を作っていた、
だから杖は外観を仕上げていて、
彼に与えていたのは、その体つきと

不具の四足動物か三本足のユダヤ人の不器用な歩み。
雪やぬかるみに彼は足をしだいに取られていった、
まるで古靴で死者たちを踏みつぶしていたようだ、
世界の人々に無関心というよりは、敵意があった。

彼のような人が続いて来た。ひげ、目、背、杖、ぼろ着。
同じ地獄から来た、百歳のこの双子を区別する特徴は
何もなかった。しかもこの異様な亡霊たちは
同じ歩みで謎の行き先へ歩いていた。

いったい私はどんなひどい陰謀の的になったのか、
あるいは、どんな悪意の偶然が、このように
私を辱めたのか? というのは、私は七回刻々と
数えた、この不吉な老人を、その人は増えていた!

私の不安を嘲笑し、親しいわななきに
襲われない人は、よく思い浮かべるがいい、
あれほどの耄碌にもかかわらず、あれら七人の
醜悪な怪物らは、なんと永遠の相を持っていた!

私は死なずに八人目を凝視できただろうか、
瓜二つで、峻厳で、皮肉で、運命の人で、
自身が息子であり父の嫌な不死鳥だが?
― それで私は地獄のような行列に背を向けた。

ものが二重に見える酒飲みのように激しく苛立って、
私は家に帰り、扉を閉じたのだ、恐怖にかられ、
混乱し、凍え、精神は熱狂し混濁し、
神秘と馬鹿げたことに傷つけられていた!

むなしく私の理性は舵を取ろうとしていた。
嵐はそれらの努力を遊びながら困らせ、
私の魂は踊っていた、踊っていた、古い平底船、
帆柱なく、化け物のようで岸のない海の上で!




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