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59 シジナ Sisina

 
       59 シジナ

想像しなさい、ディアナが狩りの優雅な身なりで、
森を駆け巡り、あるいは、いばらの茂みを叩き、
髪や胸を風に向け、狩り子の騒ぎに酔い、
見事であり、最上の騎手たちを寄せつけないでいるのを!

君たちは見たか、殺戮を愛する女、テロワーニュが
靴のない民衆を襲撃に駆り立て、
頬と目を火にし、彼女の役割を演じ、
サーベルを拳に、王宮の階段を駆け上っているのを?

シジナのようだ! しかしその優しい女戦士は
殺意と同じくらい慈悲の魂をもっている。
彼女の勇気は、火薬と太鼓によって奮い立つが、

哀願者らの前では、武器を下に置くことができる、
そして彼女の心は、炎によって荒らされているが、いつも、
それにふさわしい相手には、涙の貯水池をもっている。



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58 午後のシャンソン Chanson d'après-midi


      58 午後のシャンソン

意地悪な君の眉毛が
変な様子を君に与え、
天使には似てないが、
蠱惑の眼をしている魔女、

私は君を崇める、オー私の軽薄女、
私のすさまじい情熱!
偶像に仕える
司祭の信心のように。

砂漠と森の
香りがする、君の硬い編み毛には。
君の顔は、謎と秘密の
色々な見せかけをする。

君の体には香りがさまよう、
香炉の周りのように。
君は夕暮れのように魅了する、
黒いそして熱いニンフ。

アー! 最強の媚薬も
君の怠惰にはかなわない、
そして君は死者をよみがえらせる
愛撫を知っている!

君の腰が恋するのは
君の背中と君の乳房、
そして君はクッションの心を奪う
君の物憂げなポーズで。

時には、謎の熱狂を
静めるために、
君は、真剣に、
かみつき、キスしまくるのだ。

私の褐色の人、君は私を引き裂く、
嘲笑しながら、
それから君は私の心に
月のような君の優しいまなざしを注ぐ。

君のサテンの靴の下に、
君のかわいい絹の足の下に、
この私が置くのは、私の歓喜、
私の天分と私の運命、

君によって治された、私の魂、
君、光と色彩、によって!
盛りの爆発
私の黒いシベリアでの!



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57 あるマドンナに A une Madone

  
         57 あるマドンナに

        スペイン様式の奉納物

私が君、マドンナ、我が愛人、のために築きたいのは、
私の苦悩の底における隠れた祭壇、
そして、私の心の最も暗い片隅に、世俗の欲望や
嘲る眼差しから遠く離れて穿ちたいのは
ニッチ、紺青と金色の七宝で飾られているが、
そこに君は「驚きのマリア像」として立つだろう。
水晶の韻で巧みにちりばめられた
純粋な金属の格子枠である、磨かれた私の「詩句」で、
私は君の頭のために驚くべき「冠」を作ろう。
そして私の「嫉妬」の布地から、オー死すべきマドンナ、
私は君に「マント」を一着裁つことができる、野蛮な
仕立てで、ごわごわして重く、疑惑の裏地がついていて、
それは見張り小屋のように、君の魅力を包みこむだろう。
刺繍は「パール」ではなく、すべての私の「涙」で!
君の「ドレス」、それは私の「欲望」、震えて、
波打つ、私の「欲望」は高まり、そして低くなる、
頂上では体を揺すり、小さな谷では憩い、
ひとつのキスで白とピンクの君の全身を覆う。
私が君に作るのは、私の「尊敬」の入った美しい「靴」、
サテン製で、神々しい君の両足に屈従されるもの、
それは、やわらかな抱擁で君の両足を閉じこめて、
忠実な鋳型のように、足の形を保つだろう。
もし私の入念な技をすべて使っても、
「踏み台」のために、ひとつの銀の「月」を
彫りだすことができないのなら、
私の心の底をかじる「ヘビ」を、君のかかとの下に
置こう、君、贖いに富んだ勝利の「女王」、が憎悪と
唾でふくれ上がったこの怪物を、踏みつけ嘲弄するために。
君は見るだろう、私の「思考たち」が、それらが「蝋燭」
のように立ちならんでいるのは、「処女たちの女王」で
花咲き、青く塗られた天井に照り映えて星をちりばめている
祭壇の前だが、火の目でいつも君を見つめているのを。
そして私のなかのすべてが、君を慈しみ感嘆するので、
すべては「安息香」、「薫香」、「乳香」、「ミルラ」となり、
絶え間なく、君、雪のある白い頂、の方へ、
「香霧」となって昇るだろう、嵐をはらむ私の「精神」は。

最後に、マリアという君の役を仕上げるために、
そして愛を残忍に混ぜるために、
黒い快楽! 七つの大「罪」で、
悔恨でいっぱいの死刑執行人の私は、研ぎすました
七つの「短剣」を作ろう、そして非情な曲芸師のように、
君の愛の最も深いところを的に選び、
私はそれらすべてを打ちこもう、あえぐ君の「ハート」に、
嗚咽する君の「ハート」に、血がしたたる君の「ハート」に!



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56 秋の歌 Chant d'automne


        56 秋の歌

            Ⅰ

やがて我々は沈むだろう、寒い暗闇のなかに。
さらば、激しい光、我々の夏はあまりにも短い!
私はもう聞えている、たき木が陰気な音で落ちるのを、
それは中庭の敷石の上で鳴り響いている。

すべての冬が、私の存在のなかにもうすぐ戻る。怒り、
憎しみ、戦慄、恐怖、つらくて強いられた労働、
そして、極地の地獄のなかにある太陽のように、
私のハートは、もはや凍った赤い塊でしかないだろう。

私が震えながら聴くのは、落ちる各々の薪(まき)。
建設中の火刑台にも、これほど籠った反響はない。
私の精神は、敗北する塔によく似ている、
疲れ知らずで重い破城槌を何度も受けていて。

私には思える、この単調な音に揺らされると、どこかで
誰かが、あわただしく柩に釘を打っているように。
誰のために?― 昨日の夏だった、ここにある秋!
この不思議な物音は、ひとつの出発のように鳴っている。

            Ⅱ

私はあなたの切れ長の目の、緑がかった光が大好きだ、
優しい美人、しかし今日はすべてが私に苦い、
そして何も、あなたの愛も、部屋も、暖炉も、
私にとって、海上で光り輝く太陽には及ばない。

それでも私を愛してください、優しい人!母にもなって
ください、恩知らずの人、意地悪な人のためでさえ。
恋人か妹にもなってください、つかの間の優しさを、
それは輝かしい秋、沈みゆく太陽のよう。

短い仕事!墓が待っている。墓は貪欲!
アー!私にさせてください、私の額をあなたの膝に置き、
灼熱の白い夏を惜しみながら、
晩秋の穏やかで黄色い光を味わうことを!



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55 おしゃべり Causerie

       55 おしゃべり

あなたは美しい秋の空、澄みわたりバラ色だ!
しかし悲しみは、私のなかで海のように満ちてくる、
そして引き潮になると、私の不機嫌な唇に
苦い泥土の焼けつく思い出を残している。

― 君の手は空しく滑っている、ぼうっとした
私の胸の上を。恋人、その手が探すものは、女の爪と
凶暴な歯によって荒らされた場所だ。
もう私の心を探しなさんな、それは獣が食べた。

私の心は暴徒によって汚された宮殿だ。
奴らはそこで酔いしれ、殺しあい、髪をつかみあう!
― 香りが漂う、あなたの裸の胸のあたりに! . . .

オー美、魂に激しく災難を与える人、それが君の望みだ!
祭りのように輝く、君の炎の両目で、
獣らの食い残したこれらの残骸を焼き尽くせ!



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54 修復不能 L'Irréparable

   
        54 修復不能

押し殺すことができるのか、古い、長い「悔恨」を?
  それは住み、うごめき、身をよじり、
我々を食べている、まるで死体の蛆虫のように、
  まるで樫の木の毛虫のように、
押し殺すことができるのか、容赦ない「悔恨」を?

どんな媚薬、どんなワイン、どんな煎じ薬のなかで、
  我々は溺れさせようか、この古い敵を?
それは破壊的で貪欲、娼婦のようで、
  アリのように忍耐強い、
どんな媚薬?―どんなワイン?―どんな煎じ薬のなかで?

それを言って、美魔女、オー!言って、おまえが知るなら、
  この心に、それは苦悩でいっぱいだ、
そして瀕死の人のようだ、負傷者らに押しつぶされ、
  馬の蹄に傷つけられていて、
それを言って、美魔女、オー!言って、おまえが知るなら、

死に瀕したこの男に、狼にもう嗅ぎつけられ、
  烏に見張られているが、
壊れたこの兵士に! 十字架と墓を持つことを
  彼が諦めねばならないかどうかを、
死に瀕した哀れなこの男、もう狼に嗅ぎつけられている!

輝かせることができるのか、泥まみれで黒い空を?
  引き裂くことができるのか、闇を
それはタールよりも濃く、朝も夕もなく、
  星もなく、不吉な稲妻もないが?
輝かせることができるのか、泥まみれで黒い空を?

「希望」は、「宿屋」の窓ガラスで光るも、
  吹き消され、永久に死んだ!
月も光線もなしで、悪い道の殉難者を
  泊める所を見つけるなんて!
「悪魔」は、「宿屋」の窓ガラスですっかり光を消した!

とても可愛い魔女、君は地獄に落ちる人達が大好きか?
  言って、容赦できないことを君は知っているか?
「悔恨」を知っているか、その毒矢が
  我々の心を的にしているが?
とても可愛い魔女、君は地獄に落ちる人達が大好きか?

「修復不能」が呪われた歯でかじる
  我々の魂、哀れな記念碑を、
そしてたびたび、シロアリのように
  土台から建物を攻撃する。
「修復不能」が呪われた歯でかじる!

― 私はときどき見た、よく響くオーケストラが
  燃え立つ、ありふれた劇場の奥で、
ひとりの妖精が、地獄の空に、
  奇跡のような夜明けの光をともすのを。
私はときどき見た、ありふれた劇場の奥で、

ある存在が、それは光と金と紗だけのものだが、
  巨大な「魔王」を地面に打ち倒すのを、
だが私の心は、決して陶酔が訪れなく、ひとつの劇場だ、
  そこで人は、いつまでも、いつまでも空しく待つ、
紗の両翼を持つ「存在」を!



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53 旅への誘い L'Invitation au voyage


       53 旅への誘い

わが子、わが妹、
心地よさを思ってごらん
彼の地に行き、一緒に暮らすという!
  ゆっくり愛し、
  愛し、そして死ぬ
おまえに似ているその国で!
  曇った空からの
  ぬれたそれぞれの太陽には
私の心のための魅力がある
  それほど不可思議だ
  君の裏切りの眼が、
涙を通して輝いている。

あそこでは、すべてが秩序と美、
豪華、静寂そして逸楽だけ。

  艶のある家具たちは、
  歳月に磨かれているが、
私たちの寝室を飾るだろう。
  最もめずらしい花々が
  その匂いを
かすかな竜涎の香に交えるので、
  贅沢な天井、
  奥深い鏡、
東洋の華麗さ、
  すべてがそこで語りかけるだろう、
  ひそかに魂に
その生まれた所の優しい言葉を。

あそこでは、すべてが秩序と美、
豪華、静寂そして逸楽だけ。

見よ、あれらの運河に
  船々が眠っているのを、
気質は移り気のそれらだが。
  君の些細な望みを
満足させるためにだ、
それらが世界の果てからやって来るのは。
  ― 沈む刻々の太陽が
  覆うのは、田園、
運河、都市全体、
  だいだい色と金色で。
  世界は眠っている
暖かい光のなかで。

あそこでは、すべてが秩序と美、
豪華、静寂そして逸楽だけ。



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52 美しい船 Le Beau Navire


       52 美しい船

私は君に話したい、オー柔らかな女魔術師!
君の若さを飾る、色々な美を。
  私は君の美を君に描きたい、
それは少女時代が成熟に混じっている。

君の大きなスカートで風を払って行くとき、
君は美しい船の印象を与えている、それは沖に出て、
  帆を張り、そして行く、横揺れして、
心地よい、怠惰な、遅いリズムに従って。

広くまるい君の首の上に、太った両肩の上に、
君の頭は、異国の優雅を現し、すましている。
  穏やかで絢爛豪華な様子にして
自分の道を行く君、威厳のある子供だ。

私は君に話したい、オー柔らかな女魔術師!
君の若さを飾る、色々な美を。
  私は君の美を君に描きたい、
それは少女時代が成熟に混じっている。

君の乳房、前に出てモアレ模様を押している、
君の乳房、勝ち誇っているが、美しい衣装箪笥だ、
  それらの中高で明るいパネルは
盾のようで、きらめきを帯びている。

挑発的な盾だ、ピンクの鋲を備えている!
甘い秘密の衣装箪笥、良いものでいっぱいだ、
  ワイン、香水、リキュール
それらは多くの脳と心を錯乱させるのだ!

君の大きなスカートで風を払って行くとき、
君は美しい船の印象を与えている、それは沖に出て、
  帆を張り、そして行く、横揺れして、
心地よい、怠惰な、遅いリズムに従って。

気品ある君の両足は、それらがシャッセする裾飾りの下で、
暗い情欲を揺さぶり、いらだたせ、
  二人の女魔法使いのようだ、彼女らは
深い壺のなかで黒い媚薬をかき回している。

君の両腕は、早熟な怪力男らを手玉に取るだろうが、
つやのある大ヘビの確実なライバルで、
  執拗に締めつけるため、
君の恋人を君の心に刻印するようだ。

広くまるい君の首の上に、太った両肩の上に、
君の頭は、異国の優雅を現し、すましている。
  穏やかで絢爛豪華な様子にして
自分の道を行く君、威厳のある子供だ。



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51 猫  Le Chat


         51 猫

           Ⅰ
私の脳内を、自分のアパルトマンの
ように歩き回るのは、美しい猫、
強く、柔らかく、心引かれる。
その鳴き声は、かろうじて聞こえる、

それほどまで響きはやさしく控えめだ。
しかしこの声は静まるにしても、うなるにしても、
いつも豊かで奥行きがある。
それが魅力で秘密なのだ。

この声は、最も暗い私の奥底に
真珠となり、しみ通るが、
調和のとれた詩句のように私を満たし、
媚薬のように私を喜ばせる。

その声は、最も過酷な苦痛の数々を眠らせる、
だからすべてのエクスタシーを含んでいる。
最も長い文を言うためにも、
その声は、単語を必要としない。

いや、私の心、完全な楽器に
くい込み、もっと響く弦を
さらに堂々と
歌わせる弓はない、

君の声よりもだ、不思議な猫、
熾天使の猫、別世界の猫、
君のなかで、すべてが天使におけるように
微妙であり調和している!

          Ⅱ
ブロンドと褐色のそれの毛皮から
出てくるのはとても甘い香り、ある夕暮れ
私はその香気に満たされたのだ、一度、
ただ一度だけそれを愛撫したために。

それは場所の守護霊だ。
裁き、司り、その帝国の
すべての物に霊感を与える。
おそらく妖精だろう、それとも神か?

私の眼が、私の愛する猫の方へ
磁石によるように引きつけられ、
素直に振り向くとき、
そして、私が自分自身を見つめるとき、

驚きをともなって私が見るのは
猫の青白い瞳の火、
明るい舷灯、生き生きしたオパールの
瞳は私を熟視している。



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