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116 シテールへの旅 Un Voyage à Cythère


    116 シテールへの旅

私の心は、鳥のように、とても嬉しく飛び回り、
帆綱のまわりで自由に滑空していた。
船は横揺れしていた、雲のない空の下、
光り輝く太陽に酔わされた天使のように。

何だ、あの陰気で黒い島は? ━━シテールだ、
我々に誰かが言う、歌のなかにある有名な国、
月並みな黄金郷、すべての老けた独身男の、
見なさい、要するに、貧しい土地だ。

━━ 島、甘い秘密と心の祝祭の!
古代のヴィーナスの美しいまぼろしは
君の海の上に芳香のように漂う、
そして人々を恋と悩ましさで満たす。

美しい島、緑の桃金嬢があり、たくさんの花々が咲き、
あらゆる国民によって永久に敬愛されている、
そこでは敬慕する人々のため息が
巡っている、まるでバラ園にある香

それとも森鳩の終わりのない鳴き声のように!
━━ シテールは最もやせた土地でしかなかった、
鋭い叫びによって乱された石だらけの荒れ地。
ところが私がかいま見たのは、奇妙な物だった!

それは小さな林の日陰がある神殿ではなかった、
そこでは花を愛する若い巫女が、
秘めた熱でその身を焦がし、行きずりの
そよ風にそのローブを少し開けながら、行くのだが。

それではなく、岸にかなり近くを走って、
白い帆といっしょに鳥たちを騒がせていたとき、
我々が見たものは、三本に分かれた絞首台、
空に黒く浮かび上がっていた、糸杉のように。

凶暴な鳥たちの一部は、餌の上にとまり、すでに
熟したひとりの吊るされ人を激怒して解体していた、
それぞれが、汚れたくちばしを、道具のように、
その腐肉の血がしたたる隅々に打ち込みながら。

その両目は二つの穴だった、突き破られた腹から
重い腸がその人から太腿の上に流れ出ていた、
そして死刑執行鳥らは、ぞっとする楽しみに満腹だが、
くちばしを使って完全にその人を去勢してしまっていた。

その足の下には、ねたむ四つ足の一群が、
鼻づらを高くして、くるくる回りうろついていた。
一匹のひときわ大きい獣が、真ん中で動いていた、
補助者に囲まれた死刑執行人のように。

シテールの住人、これほど美しい空の申し子、
黙って君はこれらの侮辱を受けてきた、
ひどい崇拝の償いとして、
そして君に墓を禁じた罪の償いとして。

滑稽な吊るされ人、君の苦悩は私と同じだ!
私は感じた、揺れ動く君の手足を見て、
嘔吐のように、古い苦悩からの胆汁の長い河が
私の歯の方へ込み上げてくるのを。

とてもいとしい思い出を持つ哀れな奴、君の前で
私は感じた、かつて私の肉をあれほど噛みつぶした
苦しめる烏と黒い豹の
すべてのくちばしとすべての顎を。

━━ 空は魅力的だった、海は平穏だった。
私にとって、それ以降すべては黒く血なまぐさかった、
アー!そして私は、厚い屍衣を着ているように、
心をその寓意のなかに埋葬した。

君の島で、オーウェヌス!私は象徴的な垂直の絞首台しか
発見しなかった、そこで私の心象はぶら下がっていた . . .
━━ アー!神様!私に与えてください、
私の心と私の体を嫌悪なく見つめるという力と勇気を!



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115a 吸血鬼の変身 Les Métamorphoses du Vampire

     115a 吸血鬼の変身

女はその間、イチゴの口で、
燠火の上の蛇のように身をよじり、
コルセットの骨の上で両乳房をもみながら、
麝香が全くしみこんだ言葉を流れるままにしていた。
━━「私はね、濡れた唇をしていて、知っているの、
古い良心をベッドの奥になくす技法を。
私はどんな涙も私の勝ち誇る乳房の上で乾かすし、
老人を子供の笑いで笑わせる。
私が裸でヴェールもないのを見る人のために、
私は、月、太陽、空、星の代わりになる!
いとしい学者、私は快楽においてとても博学なので、
恐れられる私の両腕で男を私が窒息させるとき、
あるいは私が、内気で自由奔放、弱くて確固としているけど、
私の胸を噛むことにゆだねるとき、
動揺で気絶するマットレスの上で、
不能の天使たちは地獄に落ちるの、私のために!」

彼女が私の骨の髄まで吸いつくし、
それから物憂げに私が彼女に愛のキスを返そうと
彼女の方を向いたとき、なんと私が見たものは、
両脇がべたべたした革袋だけ、膿に満ちている!
私は両目を閉じた、恐怖の寒気のなかで、
そして私が生き生きした光に目を開けたとき、
私のそばで、血を蓄えていたように見えた
力強いマネキンに代わって、
骸骨の破片が雑然と震えていたのだ、
それらが自ずから発していたのは、風見鶏の叫び、
あるいは看板のか、鉄の細い棒の先にあり、
風が揺り動かしている、冬の夜々ずっと。



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115 ベアトリーチェ La Béatrice


     115 ベアトリーチェ

焼かれて、緑のない、灰まみれの地表のなかで、
私がある日、自然に対し不満を言い、
あてもなくさまよいながら、わが思考の短刀を
わが心の上でゆっくり研ぎ澄ましている時、
私は真昼に、嵐を帯びた不吉な雲が
私の頭上に降りて来るのを見た、
その雲が運んでいたのは、一群の手に負えない悪魔ら、
残酷で詮索好きな小びとらのようだ。
奴らは冷ややかに私を眺め始めた、
そして、狂人に見とれる通行人のように、
互いに笑い、ささやき合うのが聞こえた、
多くの合図、多くの目くばせを交わしながら。

━━「ゆっくり見物しよう、あの戯画で
ハムレットの影法師を。まねしているのは、
彼のポーズ、はっきりしない眼差し、風になびく髪だ。
大いに哀れではないのか、この享楽主義者、
このろくでなし、このあぶれ役者、このごろつきが、
自分の役を巧みに演じられるからといって、
自分の苦痛の歌に、鷲やコオロギや小川や花々の
関心を引きたがっていたり、そうした古い術策を
考案した我々にまで、聴衆に向かう長ぜりふを
わめいて語っているのを見ると?」

私はできたであろうに(私の誇りは山と同様に高く
厚い雲や悪魔らの叫びを支配するが)
この上ない私の頭を単にそらすことが、
もし私がみだらな彼らの間に、
罪、それはなんと太陽をよろめかせなかった!
たぐいまれな眼差しをもつわが心の女王を見なかったなら、
彼女は彼らといっしょに私の暗い苦悩を嘲笑し、
ときどき彼らにみだらな愛撫を注いでいたのだが。



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114 寓意 Allégorie


       114 寓意

それはある女、美しく様子が豊かだ、
彼女のワインのなかに彼女の髪を垂らしたままで。
恋の爪、賭博場の毒、すべては
滑り、切れ味が鈍る、皮膚の花こう岩に対して。
彼女は「死」を笑う、そして「放蕩」をものともしない、
それらの怪物らは、破壊する戯れのなかで、
いつも掻き削りなぎ倒す、それでもその手は
堅固で直立したその体の荒削りな威厳を尊重した。
彼女は女神で歩き、スルタンの妃で休む。
彼女は快楽のなかにマホメット教の信仰を持っている、
そして広げた両腕のなかに、そこは乳房にあふれているが、
彼女は目で人間の仲間を呼び出す。
彼女は信じている、彼女は知っている、不妊のこの処女
にしても世界の進行に必要であって、
肉体の美が崇高な恵みであり、
すべての汚辱から赦免を引き離すことを。
彼女は「地獄」を知らない、同様に「煉獄」も、
そして暗黒の「夜」に入る時が来たら、
彼女は「死」の顔をじっと見るだろう、
新生児のように、━━ 憎しみなしに後悔なしに。



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113 血の噴水 La Fontaine de sang


      113 血の噴水

ときどき私の血がどっと流れるように思える、
リズミックな嗚咽をする噴水のように。
私は血が長いざわめきを伴って流れるのを聞く、
しかし体を触っても無駄だ、傷は見つからない。

都市を突き抜け、決闘場のなかのように、
血が流れて行く、舗石を小島に変えながら、
それぞれの生き物の渇きをいやしながら、
そして自然を赤くいたるところで染めながら。

言葉たくみなワインに、私はよく頼んだ、
私をむしばむ恐怖を、一日のあいだ眠らせほしいと。
ワインは目をもっと明るくし、耳をもっと鋭くする!

私は恋愛に忘れる眠りを探し求めた、
しかし恋愛は私にとって針のマットレスに過ぎない、
あれらの残酷な娘たちに飲ますだけだ!



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112 二人の優しい姉妹 Les Deux Bonnes Soeurs


     112 二人の優しい姉妹

「放蕩」と「死」は、二人の愛想のいい娘たち、
キスを惜しまないし、健康に富んでいる、
その腹はいつも処女で、ぼろ着をゆったりまとい、
切りのない仕事のもとに、一度も出産したことがない。

不吉な詩人は、各家庭の敵で、
地獄のお気に入りで、不遇の宮廷人だが、
その彼に、墓と売春宿が青葉の生け垣のなかで
提示するのは床、決して悔恨が訪れたことのないもの。

そして棺桶と寝室が、豊かな冒瀆表現状態で、
私たちに、次々と、二人の優しい姉妹のように、
提供するのは、すさまじい快楽とぞっとする甘美。

いつ君は私を埋葬したいのか、汚らわしい両腕の「放蕩」?
オー「死」、魅力ではそいつのライバル、いつ君は来るのか、
悪臭を放つそいつの桃金嬢に、君の黒い糸杉を接ぎ木しに?



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111 地獄に落とされる女たち Femmes damnées


    111 地獄に落とされる女たち

物思いに沈む家畜のように、砂の上に横になり、
彼女らは大海原の水平線の方へ目を向け、
彼女らの足と足が求めあい、手と手が近づき、
甘美な悩ましさと苦い戦慄を感じている。

ある女たちは、長い打ち明け話に心が夢中になり、
小川がさえずる木立の奥で、
臆病な少女期の恋を拾い読みし始め、
若い低木の生木を彫っている。

他の女たちは、シスターのように、ゆっくり厳かに
亡霊たちにあふれる岩山を越えて行く、
そこで聖アントニウスは溶岩のように出現するものを
見た、彼らの誘惑である緋色で裸の乳房たちだ。

ある人たちは、崩れかかった松やにの微光のなか、
古い異教の洞窟の、無言のくぼみで、
君を呼んでいる、遠吠えするその人たちの熱を救うようにと、
オー、バッカス、古くからある悔恨を眠らせる者!

そして他の人たちは、その胸がスカプラリオを愛しているが、
その人たちの長い衣の下に鞭を隠し、
暗い森と孤独な夜々のなかで、
快楽の泡を責め苦の涙に混ぜ合わせている。

オー処女たち、オー悪魔たち、オー怪物たち、
オー殉教者たち、現実を軽蔑する偉大な精神たち、
無限を探究する女たち、信心家たちそして半獣神たち、
ある時は叫びに満ち、ある時は涙に暮れる、

君たちを私の魂は追いかけたのだ、君たちの地獄のなかで、
哀れな姉妹たち、私は君たちを同情するのと同じく愛する、
君たちの陰鬱な苦悩のために、満たされない渇きのために、
そして愛の壺々のために、それらは偉大な心がいっぱいだ!




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110b 地獄に落とされる女たち  デルフィーヌとイポリット Femmes damnées Delphine et Hippolyte


   110b 地獄に落とされる女たち
       デルフィーヌとイポリット

衰弱しているランプの淡い光のなか、
香りのしみ込んだいくつかの深々したクッションの上で、
イポリットは、彼女の若い無邪気の幕をもち上げる
強い愛撫を夢想していた。

彼女は、嵐で乱された目で、すでに遠くなった
彼女の純真の空を探し求めていた、
まるで旅人が、今朝通り過ぎた青い地平の方に
頭を向けるかのように。

和らいだ両目からの怠惰な涙、
打ちひしがれた様子、呆然、陰気な悦楽、
負けた両腕、無意味な武器のように投げ出されているが、
すべてが助け、すべてが飾っていたのは、彼女のか弱い美しさ。

その足もとに横になり、穏やかで喜びに満ちて、
デルフィーヌは燃える視線で彼女をじっと見つめていた、
まず初めに牙で印をつけた後で
獲物を見守る強い獣のように。

強い美女は、か弱く見事な美女の前に跪き、
心地よさそうに勝利のワインを飲んでいた、
そして相手の方に身を伸ばした、
まるで甘い感謝の言葉を得るためのように。

彼女が、青白いいけにえの目のなかに探していたのは
快楽の歌う無音の賛歌、
そして長い溜息のように目蓋から出てくる
無限で崇高なあの感謝。

━━ 「イポリット、いとしい人、何を語るの、これらから?
今わかっているのかしら、あなたの最初に咲いたバラを
神聖ないけにえとして、捧げてはならないことが、
それを萎れさせかねない荒々しい呼吸に対して?

私のキスたちは軽い、夕暮れに澄んだ大きな湖を
愛撫するカゲロウのように、
それなのに、あなたの男のそれらは轍をうがつのよ、
まるで荷車か鋤の引き裂く刃のように。

それらはあなたを踏んで通っていくのよ、まるで
容赦ない蹄のある重い引き馬か引き牛のように . . .
イポリット、オー私の妹!さあこちらに向けて、あなたの顔を、
あなた、私の魂で私の心、私の全てで私の半身、

私の方に向けて、青と星に満ちた両目を!
神の香油の魅惑的な眼差したち、これらのひとつのために
私はもっと曖昧な快楽のヴェールをはいであげる、
そしてあなたを眠らせてあげる、果てしない夢のなかに!」

だがその時、イポリットはその若い顔をあげて、
━━ 「私は恩知らずでないし後悔もしてないわ、
私のデルフィーヌ、私は苦しい、私は不安よ、
夜の恐ろしい食事の後のように。

私に襲いかかる感じなのは、重苦しい恐怖、
散らばった亡霊の黒い群れ群れ、
それらは私を揺れる道の上につれ出そうとする、
そこは血まみれの地平線が四方を閉ざしているわ。

すると私たちは変なことをしたのかしら?
説明して、できるなら、私の動揺と私の恐怖を。
あなたが「私の天使!」と私に言うとき、私は恐れ
おののくの、それなのに唇はあなたに向かう感じがする。

私を見つめないで、そんな風に、私の思いのあなた!
いつまでも私が愛するあなた、私が選んだ姉、
たとえあなたが仕掛けられた罠だとしても
そして私の堕落の始まりだとしても!」

デルフィーヌは、悲劇的なたてがみを揺さぶり
鉄の神託台に座りじだんだを踏むようにし、
宿命の目で、専制君主的に答えた。
━━ 「いったい誰が恋を前にあえて地獄を語るのか?

無益な夢を追う男は、永遠に呪われるがいい、
彼は愚かにも初めて言い張った、
不毛にして解けない問題に取りつかれ、
恋愛の事々に貞淑を混ぜることを!

神秘の調和のなかに、影を熱と、夜を昼と
結びつけようとする者は、
人が愛と呼ぶこの赤い太陽で
麻痺するその体を暖めることは決してできない!

行け、望むなら、愚かなフィアンセを求めに。
走れ、彼の残酷なキスに処女の心を捧げに。
そして、後悔と恐怖に満ち、それも蒼白になり、
おまえは私に再び持ってくるのさ、傷跡のある胸を . . .

人はこの世でただ一人の主人しか満足させられない!」
しかしその少女は、巨大な苦しみをぶちまけながら、
突然叫んだ。―「私の心の内で広がっているのは、
大きく開いた深淵、この深淵は私の心よ!

火山のように燃えている、虚空のように深い!
何もこのうなる怪物を満腹させない、
そして復讐の女神の渇きをいやすものもない、
彼女はトーチを手にそいつを焼きつくす、血までも。

なんと私たちの閉じられたカーテンが、世間から
私たちを切り離し、疲労が休息を連れて来ることか!
私はあなたの深い胸に私の身をなくしたい、
そしてあなたの胸に見つけたいのは、墓の冷たさ!」

━━ 降りてゆけ、降りてゆけ、哀れな犠牲者たち、
降りてゆけ、永遠の地獄からの道を!
深淵の最深部に飛び込め、そこはあらゆる罪が、
空由来ではない風に鞭打たれ、

ごちゃまぜに沸き立っている、雷雨の騒ぎを伴って。
狂った亡霊たち、走れ、君らの欲望の目標へと。
決して君らの激しい怒りを君らは晴らせないし、
君らの懲罰は君らの快楽から生まれるのだ。

決して新鮮な光は君らの洞窟を照らさない。
壁々の割れ目から熱のある瘴気が
ランタンのように燃えながら漏れている、
そして恐ろしいそれらの香りで君らの体にしみこむ。

君らの享楽からくる厳しい不毛は
君らの渇きを悪化させ、君らの皮膚をこわばらせる、
そして欲望の荒れ狂う風は
君らの肉体をばたつかせる、古い旗のように。

生きている人々から離れ、さまよい、断罪され、
荒野を横切り、狼たちのように駆け回れ。
君らの宿命を果たせ、乱れた魂たち、
そして逃れよ、君らが自身に持つ無限を!


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110a レスボス Lesbos


       110a レスボス

母、ラテンの戯れとギリシャの逸楽のだが、
レスボス、そこでは楽しいか悩ましげなキスが
太陽のように熱く、スイカのように冷たく、
輝かしい昼と夜の装飾となる。
母、ラテンの戯れとギリシャの逸楽のだが、

レスボス、そこではキスがまるで滝のようだ、
それは恐れずに底なしの深淵に身を投じ、
すすり泣き不規則に叫びながら流れてゆく。
雷雨めきひそやかで、いっぱいになり深い。
レスボス、そこではキスがまるで滝のようだ!

レスボス、そこではフリュネたちが互いにひかれ合う、
そこでは決してため息が木霊なしには残存しなかった、
パフォスと等しく、星々は君を感嘆する、
そしてウェヌスは正当にもサッフォーを妬むことができる!
レスボス、そこではフリュネたちが互いにひかれ合う、

レスボス、陸地は熱く物憂げな夜々がある、
それらが作るのは、彼女らの鏡における、不毛な快楽!
女の子らが、目は落ちくぼんでいるが、愛撫するのは、
彼女らの恋する体の、熟した年頃の果実。
レスボス、陸地は熱く物憂げな夜々がある、

しわを寄せさせておけ、老プラトンの厳しい目に。
女王、甘美な帝国のだ、愛すべき高貴な陸地、
君は自分の許しを引きずりだす、過度のキスから、
そしてずっと尽きない恋の洗練から、
しわを寄せさせておけ、老プラトン的な男の厳しい目に。

君は自分の許しを永遠の殉教から引きずりだす、
野心的な心に休みなく課されて、
輝く微笑みが私たちから遠くで、なんと引きつけることか、
他の天空の端にぼんやりと垣間見られていて!
君は自分の許しを永遠の殉教から引きずりだす!

神々の誰が、レスボス、君の裁判官にあえてなろうか、
そして作業で青くなった君の額を罰するだろうか、
もし金でできた彼の天秤が、君の川が海へ注いだ
涙の洪水を量らなかったならば?
神々の誰が、レスボス、君の裁判官にあえてなろうか?

正と不正の掟は、私たちに何を要求するのか?
乙女たち、気高い心をもち多島海の誉れ、
君たちの宗教は他のものと同じように尊い、
そしてその愛は「地獄」と「天国」を笑い飛ばす!
正と不正の掟は、私たちに何を要求するのか?

レスボスが地上の全てのなかから私を選んだから、
花と咲く乙女たちの秘密を歌うために、
しかも私が少年時代から入ることを許されたのは
黒い神秘、暗い涙と混ぜられる羽目を外した笑いのだが、
レスボスが地上の全てのなかから私を選んだから。

そしてその時から、私はレフカス島の頂で見張っている、
鋭く確かな目をした歩哨のように、
海原のなかの遠くで形が震える
帆船、小帆船、または軍艦を昼も夜も監視して、
そしてその時から、私はレフカス島の頂で見張っている

知るために、海が寛大で善良かどうかを
そして岩が鳴り響くすすり泣きのなかで
ある晩、許すレスボスの方へ、身投げしたサッフォーの
崇敬される遺骸をもとに戻すかどうかを
知るために、海が寛大で善良かどうかを!

雄々しいサッフォー、恋する女で詩人、のことだが、
ウェヌスよりも美しい、くすんだ青白さで!
━━ 青い目が負けているのは黒い目、暗い隈が
染みつき、描かれたのは苦悩
雄々しいサッフォー、恋する女で詩人、のことだが!

━━ ウェヌスよりも美しい、世界の上にまっすぐ立って、
降り注いでいるのは、澄んで静かな宝物、
そしてブロンドの若さの輝き、
わが娘に見とれる老いたオケアノスの上に、
ウェヌスよりも美しい、世界の上にまっすぐ立って!

━━ 自分の不敬な言葉の日に死んだサッフォーのことだが
その日彼女は、考案された崇敬と儀式を侮辱して、
美しいその体を、至高の餌食にした、
乱暴者の傲慢が罰したのは信心蔑視
自分の不敬な言葉の日に死んだあの女のことだが。

それでその時からなのだ、レスボスが嘆いているのは、
そして、全世界が彼女を回復させる栄誉にもかかわらず、
嵐の叫びに夜ごと酩酊しているのは、
それを天に向けて無人の岸辺が発していて!
それでその時からなのだ、レスボスが嘆いているのは!




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110 女殉教者 Une martyre


       110 女殉教者
    知られていないある巨匠のデッサン

それらに囲まれて、小瓶類、ラメの織物、
  快感の家具類、
大理石でできたもの、タブロー、よい香りの衣装
  それは豪華なプリーツをひいている、

生暖かい寝室のなかで、そこでは温室のなかのように、
  空気が危険で致命的であり、
そこでは瀕死のブーケが、ガラスの柩のなかで
  最後のため息を吐き出している、

首のない死体が、渇きをいやされる枕の上に
河のように流すのは、
生々しい赤い血、そしてそれを敷布は牧草地の貪欲さで
  多量に飲んでいる。 

青ざめた幻影に似た、それは闇が生みだし
  我々の目を縛りつけているが、
その頭は、豊かな黒髪と
高価な装身具が乱れていて、

ナイトテーブルの上に、キンポウゲのように、
  休んでいる。そして、思考のない
視線が、黄昏のように白くぼんやりして、
  ひきつった両目から漏れている。

ベッドの上に、裸の胴体が憚りもなく
  完璧に身を任せて、さらけ出しているのは
内に秘めた光輝、そして運命による美しさ、
  それらを自然が彼女に贈ったのだが。

薄バラ色の長靴下が、金の縁飾りをして、
  思い出のように片脚に残っている。
靴下どめは、燃える秘密の目のように、
  ダイヤの視線を投げつける。

その特異な外観が、それは孤独を表し、
  彼女の態度のように挑発する目をもつ
物憂げな大肖像画であるが、
  明かすのは、暗い愛、

罪深い喜び、そして奇妙な祝宴、
  そこは地獄のキスで満ちあふれ、
それを喜んでいたのは、悪い天使らの群れ、
  カーテンのひだのなかで泳いでいた。

だがそれにしても、不調和な輪郭をした
  肩の優美なやせ具合や、
少しとがった腰や、苛立つ蛇のように
  溌剌とした胴を見れば、

彼女はまだとても若いのだ!― 高ぶる彼女の魂
  そして倦怠にかじられた彼女の官能
それらが少し戸を開けてしまったのか、放浪し迷った
  欲望に取りつかれた猟犬の群れに?

君が生前、多くの愛にもかかわらず、
  満足させ得なかった執念深い男は、
無反応で寛大な君の肉体に対して、
  巨大な彼の欲望を満たしたのか?

答えよ、けがれた死体! 硬い君の三つ編みを用いて
  熱い腕で君を持ち上げ、
私に言え、恐ろしい首、彼は君の冷たい歯に
  最後の別れの挨拶を押しあてたのか?

━━ からかう世間から離れて、不純な群衆から離れて、
  詮索好きの司法官から離れて、
眠れ静かに、眠れ静かに、奇妙な女、
  君の神秘の墓のなかで。

君の夫は世界を駆け回り、君の不滅な形は
  彼が眠るとき、そばで起きている。
君と同様に、おそらく彼は君に忠実であり、
  死ぬまで一貫しているのだ。



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