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109 破壊 La Destruction


         109 破壊

休みなく、私のそばで「悪魔」が動き回る。
彼は私のまわりを漂う、さわれない空気のように。
私は彼を飲む、すると彼が私の肺を焼き、
それを罪深い永遠の欲望で満たすのを感じる。

ときどき彼は、私の「芸術」への大きな愛を
知っているから、最高に魅惑する女の形をとる。
そして偽善者のもっともらしい言い訳のもとで、
破廉恥な媚薬に、私の唇を慣れさせる。

そういうわけで、彼は私を連れていく、
神の視線から遠くへ、疲れで息を切らし壊れているのに、
深い人けのない、「倦怠」の平原の真ん中へ。

そして混乱であふれたわが目に投げこむのは、
けがされた衣類、開いた傷口、
それに「破壊」の血まみれになった道具!



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108 恋人たちのワイン Le Vin des amants


    108 恋人たちのワイン

今日、空間は素晴らしい!
くつわなし、拍車なし、手綱なし、
出発しよう、ワインの馬にまたがって
妖精と神の天空に向かって!

強烈な船乗り熱病にさいなまれる
二人の天使のように、
朝の青い透明のなかを
遥かな蜃気楼を追いかけよう!

賢い旋風のうえで
ふんわりと釣合をとり、
二人一緒の錯乱中、

わが妹、並んで泳ぎ、
休みや中止なく、われらは逃れよう、
わが夢の楽園へ!



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107 孤独な男のワイン Le Vin du solitaire


    107 孤独な男のワイン

特異な視線、遊び女のもの、
それはうねる月が震える湖に放っている
白い光線のように、われわれの方へ滑り込む、
彼女がその物憂げな美しさを、そこで輝かせたがるときに。

最後の金貨の袋、賭博者の指が握っている。
放縦なくちづけ、やせたアドリーヌがする。
音楽の音色、気力を奪い甘やかし
人間の苦しみからくる遠い叫びに似ているもの、

それらのすべてがかなわないものは、オー深い瓶、
そのしみ通る慰め、君の豊かな胴が恭しい詩人の
渇望する心を放さないものだが。

君が彼に注ぐのは、希望、若さ、生命、
━━ そして誇り、この宝は、すべての窮乏生活のだが、
われわれを勝ち誇らせ、「神々」に似たものにする!



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106 人殺しのワイン Le Vin de l'assassin


     106 人殺しのワイン

わいの嫁はんは死におった、わいは自由や!
そやさかい、わいは思う存分飲める。
わいが一文無しで帰った日にや、
あいつの叫びは、わいの神経をずたずたにしおった。

王と同じくらい、わいは幸せや。
空気はきれい、空はすばらしい . . .
うちらは似たような夏を経験してた、
その時わいはあいつに惚れてまった!

恐ろしい渇きが、それはわいを引き裂いとるが、
満たされるのに必要であろうものは、
あいつの墓に入る量と同じくらいのワイン、
― それは少なく言うてるんやないで。

わいはあいつを井戸の底に投げたんや、
しかも縁石のすべてを、あいつの上に
押しやりさえもした。
― わいはあいつを忘れよう、それができるなら!

愛の誓いの名において、
それはうちらを決して解放せえへんし、
うちらを仲直りさせるためのもので
うちらが陶酔した良き時のものやけど、

わいはあいつに夕方、薄暗い街道の
デートを哀願したんや。
あいつはそこに来た! ― あほな女!
うちらはみんな大なり小なりあほや!

あいつはまだきれいやった、
ほんまにくたびれているんやけど! このわいは、
あいつをあまりにも愛しとったんや! そんなわけで
わいはあいつに言うた、「この世からいね!」

誰もわいを理解するはずがない。これらの
あほな酒飲みらのなかのひとりでも
病的な夜々のなかで思い浮かべるやろか、
ワインを屍衣にすることなんか?

このやくざやらは不死身であり、
鉄の機械のようやけど、
決して、夏でも冬でも、
本当の愛を知らへんかった、

それは黒い呪縛、
地獄のような不安の一団、
毒のガラス瓶、涙、
鎖や骸骨の物音を伴のうておるが!

― ただいま、自由でひとりや!
わいは今夜、死ぬほど飲むでー。
そやから、こわいもんや悔いもなく、
わいは地べたに寝るんや、

そして犬みたいに眠るんや!
荷車、重い車輪で
石やら泥を積んどるが、
車両、ひどくいきりたっとるが、

それらがわいの罪深い頭を押しつぶすか、
わいを真ん中で切ってしまうこと、
そんなことはどうでもよか、「神」、
「悪魔」、「聖体拝領台」も同じや!



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105 屑屋のワイン Le Vin des chiffonniers


       105 屑屋のワイン

しばしば、街灯の赤い明りにあわせて、
そこでは風が炎を打ちたたき、ガラスを苦しめているが、
泥だらけの迷宮である古い場末の中心で、
そこは人間がおびただしい酵母の状態でうごめいているが、

人々はやって来る屑屋を見る、首をふり、
つまずき、壁にぶつかり、詩人のようだ、
密告者を家来にして気にせずに、
彼は輝かしい計画を心の底からぶちあげる。

宣誓し、卓越した法律を押しつけ、
悪者を打ちのめし、犠牲者を起き上がらせる、
そして玉座の天蓋としての天空の下で
彼自身の美徳の輝きに酔っている。

そう、この人々は、世帯の苦しみに追い回され、
労働によって打ちのめされ、年齢によって苦しめられ、
巨大なパリに追い詰められた嘔吐物である
屑の山積みの下で、へとへとにされ、腰を曲げられ

帰って来るのだ、酒樽のいい匂いがして、
仲間たちが後に続き、戦いで髪が白くなり、
口髭が古い軍旗のように垂れ下がっているが。
旗々、花々、凱旋門らは

彼らの前にそびえるのだ、荘厳な魔術!
そして耳を聾する、光り輝く大饗宴のなかで、
そこには、らっぱ、太陽、叫び、太鼓があるが、
彼らは、愛に酔う民衆に栄光をもたらす!

このようにして、軽薄な「人類」を介して
ワインはまぶしいパクトロス川のように、金色に流れる。
人間の喉によって、ワインは自分の武勲を歌う
そして真の王者と同様に、恵みによって統治する。

黙って死んでゆく、これらの老いた呪われ者たちすべての
恨み心を包み、怠惰の心を慰めるために、
神は、悔恨に駆られ、眠りを与えた。
「人間」は「太陽」の聖なる息子、「ワイン」をつけ加えた!



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ワイン 104 ワインの魂 Vin 104 L'Âme du vin


          ワイン  

      104 ワインの魂

ある夕暮れ、ワインの魂が瓶のなかで歌っていた。
「人間、君に向けて私は歌う、オーいとしい不遇者、
私のガラスの牢獄、真紅の封蝋のもとで、
光と友愛に満ちた一曲を!

私は知っている、燃える丘の上で、
私の命を生み、私に魂を与えるために、
どれだけの労苦、汗、焼けつく太陽が必要かを。
だが私は恩知らずでも、悪意があるわけでもない、

なぜなら、私が労働で消耗した人間の喉のなかに
落ちるとき、巨大な喜びを感じる、
そしてその熱い胸はやさしい墓穴、
そこは私の冷たい穴倉よりもずっとお気に入りだ。

君は聞こえているか、どきどきする私の胸で、
鳴りひびく日曜の反復句が、ささやく希望が?
テーブルに両肘をつき、両袖をまくり上げ、
君は私を賞賛し、満足するだろう。

私は心を奪われた君の妻の目に火をともす、
君の息子には、力と血色を取りもどさせ、
その弱々しい人生のアスリートのために
闘技者の筋肉を強固にする油になろう。

君のなかに私は落ちるのだ、植物でできたアンブロシア、
貴重な種、それは永遠の「種まく人」によって投げられるが、
私たちの愛から詩が生まれるために。
その詩は神に向かって珍しい花のようにほとばしる!」



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103 朝の薄明 Le Crépuscule du matin


       103 朝の薄明

起床ラッパが兵舎の中庭で鳴っていた、
そして朝の風がランタンらに向かって吹いていた。

その時刻だった、そのとき悪夢の群れが、
褐色の若者たちを、床のなかでよじらせていた、
そのとき痙攣し揺れ動く血まみれの目のような
ランプが、日の光に対して赤い斑点をなしていた、
そのとき魂が、重い気難しい肉体の重圧によって、
ランプと日の光との闘争をまねしていた。
そよ風がぬぐう涙顔のように、
大気は過ぎ去っていく物事の震えに満ちている、
そして男は書くことに、女は愛することにうんざりだ。

家々はあちこちで煙を立て始めていた。
快楽の女たちは、鉛色の目蓋、
開いた口で、ばかな眠りを眠っていた。
物乞いの女たちは、冷たくやせた乳房をひきずって、
燃えさしに息を吹きかけ、指に息を吹きかけていた。
その時刻だった、そのとき寒さと吝嗇のさなかで
分娩中の女たちの苦痛は激しくなっていた。
泡立つ血によって中断される嗚咽のように、
雄鶏の鳴き声は遠くで、陰鬱な空気を引き裂いていた。
霧の海は大建造物らを浸している、
そして瀕死の人たちは、施療院の奥で
不規則にしゃくりあげる最後の喘鳴を発していた。
放蕩者たちは彼らの労働に打ちのめされて帰った。

バラ色と緑色で震えている夜明けの光は
閑散としたセーヌ川に向けて、ゆっくりと前進していた、
そして陰鬱なパリは、よく働く老人だが、
目をこすりながら、道具を握っていた。



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102 パリの夢 Rêve parisien


       102 パリの夢
      コンスタンテァン ギースに

            Ⅰ
この恐るべき風景画について、
人が決して見なかったものだ、
今朝もまた、そのイマージュは、
曖昧で遠いが、私を魅了する。

眠りは奇跡に満ちている!
奇妙な気まぐれによって、
私はこれらの光景から
不ぞろいな植物を追放してしまった、

そして、私の天才を誇る画家の
私が自分のタブローのなかで賞味していたのは、
金属、大理石、水の
陶酔させるモノトーン。

バベルの塔、階段とアーケードでできていて、
それは無限の宮殿だった、
あちこちに池があり、ほうぼうの滝が、
艶なしの、あるいは光沢の金色で落ちていた。

しかも重厚な大滝は
水晶のカーテンのようであり、
金属の城壁に対して
目がくらむばかりに掛かっていた。

樹木ではなく柱列が
眠る池のまわりを取りかこみ、
そこでは巨大な水の精たちが
女のように、自分たちの姿を映していた。

青い水の広がりはあふれ出ていた、
バラ色と緑色の岸々の間で、
何百万里つづいて、
天空の果ての方へ。

聞いたこともない宝石があった、
そして魔法のような海も。
映し出されたすべてのものによって
目がくらむ巨大な鏡があった。

天空にある、ガンジス川のような大河は、
憂いがなく寡黙で
その壺の財宝を
ダイヤモンドの深淵に注いでいた。

私は妖精の国の建築家、
宝石のトンネルの下に
服従させた海洋を
私の意志で通させていた。

そしてすべては、黒い色でさえ、
磨かれ、明るく、虹色のように見えた。
液体はすべての光輝をクリスタルの
光線のなかに埋め込んでいた。

天の底でさえ、これらの奇跡を
照らすための星ひとつなく、
太陽の跡すらない、
それらは自身の火で輝いていた!

そしてこれらの流動的な驚異の上方に
超然としていたのは ( 恐るべき新事実!
すべては目のために、耳には全然聞こえない!)
永遠の沈黙だ。

            Ⅱ
炎に満ちた私の両目を再び開けて、
私が見たものは、私の住居のおぞましさ、
私の魂を回復して、感じたものは、
呪われた心配事のとがった先。

振り子時計は、不吉な響きだが、
乱暴に正午の音を立てていた、
そして空は闇をまき散らしていた、
麻痺して惨めな世界の上に。



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101 霧と雨 Brumes et pluies


       101 霧と雨

オー秋の末、冬、泥でぬれた春、
眠らせる季節だ! 私は君を愛し、たたえる、
ふわっとした屍衣とぼんやりした墓によって
私の心と脳を、このように包んでいるので。

この大平原のなかで、そこでは冷たい疾風が戯れているが、
そこでは長い夜々、風見鶏が声をからしているが、
私の魂は、生暖かい春の時よりも一層よく
烏の翼を十分に開くだろう。

不吉なことでいっぱいの心、そしてずっと前から
霧氷が降りている心に、何よりも快いのは、
オー青白い季節たち、われらの風土の女王たち、

君たちの青ざめた闇でできた永続する外観だ、
― もっとも、月のない宵に、二人ずつ、
危うい寝床で苦痛を眠らせることは別として。



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100 「気品のある女中 . . . 」 ' La servante au grand coeur . . . '


    100 「気品のある女中 . . . 」

気品のある女中、あなたが嫉妬していた人、
それが彼女の眠りを眠っている、つましい芝生の下で、
私たちは、それでも彼女に花を持っていくべきでしょう。
死者たち、哀れな死者たちは、大きな苦痛のなかにいる、
そして「十月」が、古い木々の枝打ち職人だが、
その陰鬱な風を、彼らの大理石のまわりに吹きつけるとき、
きっと、彼らは、シーツにもぐり込んで、いつもするように
温かく眠っている生者たちを、恩知らずだと思うはずだ。
寝床の連れ合いがない、楽しいおしゃべりがない、
黒い夢想にさいなまれている、凍てついた古い
骸骨たちは、蛆虫に活動されているが、
冬の雪がしたたり落ちるのを、そして墓の柵に垂れ下がる
断片を取りかえに来る友達や家族もいないまま
世紀が流れるのを感じているのに。

暖炉の薪が口笛を吹いて歌うとき、もし夕暮れに、
彼女が穏やかに肘掛け椅子に座っているのを、私が見るなら、
もし、十二月の青く冷たい夜に、
彼女が私の部屋の片隅に、厳かにうずくまっているのを、
そして永遠の寝床の奥から来て、
大きくなった子供を、母の目で庇護するのを私が見つけるなら、
この敬虔な魂に、私は何を答えればいいのだろうか、
くぼんだ彼女の目蓋から、涙が落ちるのを見て?



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